米国:塵肺障害信託基金が資金枯渇の危機

掲載日:2019年3月28日

3月19日の報道によると、2020年に米国の塵肺障害信託基金の資金が枯渇する恐れがある。塵肺障害信託基金は1978年に創設され、石炭採掘量に応じて課せられる税金を財源として炭鉱労働者の塵肺治療に資金を提供しており、おおよそ25,000人の引退した鉱夫たちが連邦政府の補助に頼って塵肺の治療をしている。基金の運営は税金によって支えられてきたが、税制が失効し資金供給が減少している。

以前鉱夫として働いていたJohn Robinson氏の塵肺治療にかかる費用は4,000USD/月にのぼる。信託基金は約25,000人の引退した鉱夫に補償を提供している。補償を受ける人々が働いていた会社のほとんどはすでに破産している。Robinson氏を含む多くの人々は微細な粉塵が肺に詰まることによってしだいに窒息する呼吸障害に苦しんでいる。しかしながら彼らが頼りにしている基金はTrump政権と議会が手をこまねいているうちに資金不足に陥っている。

この冬の米国政府の機能停止の最中、今年1月1日に塵肺障害信託基金に資金を提供してきた石炭に課せられる税金が減税され、その後復活していない。当該減税は潜在的に石炭企業に数億米ドルのコスト削減をもたらす。

2018年末までの税率では坑内掘り炭鉱で採掘される石炭1トン当たり1.1USD、露天掘りでは1トン当たり55セントが課税され、昨年一年間で4億5,000万ドルの資金を供給してきた。税制の失効期限である2018年12月31日までに立法府が税制の更新を行わなかったため、税率が坑内掘り、露天掘りそれぞれに対して約50セント、25セントに低下した。

基金に拠出される資金が半分以下となったことから、財務担当者は2020年中頃には塵肺治療費用を全額補償する資金がなくなるだろうと試算している。

これまで以上に若い世代の鉱夫が塵肺を罹患するようになっており、Robinson氏は彼の世代だけでなくより若い世代の鉱夫たちが補償を受けられなくなることを心配している。

Trump大統領は2016年の大統領戦で石炭産業を救うと誓い、関係者の支持を得てきた。2016年8月にWest Virginia州に遊説した時には会場がヘルメットをかぶった鉱夫たちに埋め尽くされた。Trump大統領は彼らのことを偉大で勇敢な人々と称え、“あなたたちの勇気に感服する”と述べた。

2019年3月中旬に公表された予算案の中でTrump大統領は2018年と同レベルの石炭への課税の復活について言及しなかった。

大統領府は3月19日の声明の中で“Trump大統領政権は規制緩和と政府の不干渉によって鉱業を支援し続けてきた”と述べた。

上院多数党院内総務のMitch McConnell議員のお膝元であるKentucky州は石炭生産で全米第三位である。彼は昨年10月にOhio Valley ReSourceの記者に対して“期限が来る前には対処する”と述べていた。

しかしながら、“対処”はされなかった。McConnell議員の広報担当官Robert Steurer氏は昨年の発言を繰り返さず、“塵肺障害信託基金を通じて支給されている補償は、今後も標準どおり支給される”、“McConnell議員は今後も補償の継続に努めてゆく”と述べるにとどまった。

政治資金に詳しいウェブサイトOpen Secretsによれば、Trump大統領とMcConnell議員は石炭産業から多額の献金を受けている。

Trump大統領は2016年の大統領選で石炭企業とつながりの深い政治団体や個人から27.6万USD以上の献金を受けた。Trump大統領就任式実行委員会はOklahoma州TulsaにあるAlliance Resource Partnersの最高取締役Joe Craft氏から100万USD、全米最大の株式非公開石炭企業Murray Energy Corporationから30万USDの献金を受けた。

McConnell議員は2014年に当選して以来29.7万USD以上の献金を受けた。

(石炭開発部 弘中 孝宜)

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