ウクライナ:電力危機、及びその背景にある国内の石炭不足

掲載日:2021年2月18日

2月5日付地元報道によると、欧州に記録的な寒波が襲来する中、ウクライナ最大の民間電力会社DTEKが保有する国内最大のZaporizhia石炭ガス発電所が機器トラブルで緊急停止、国内電力網の統一エネルギーシステムで750MWの容量不足が発生したことで、国内で一時大規模停電が発生し、生活用の電力・水供給が途絶えたという。

今回の資源エネルギー危機には国内での石炭在庫の極端な不足が背景にある。9日、国営エネルギー会社Ukrenergoは国内熱電供給発電所における石炭埋蔵量が、必要最小限のものより43%少ないと述べている。また国家エネルギー・公益事業規制委員会(NEURC)は、2020年11月以降、火力発電所での石炭在庫が80%減少し、2021年2月初旬には前年比約82%減少していると述べている。9日、NEURCは、石炭不足によって電力網システム全体の事故に直面する可能性があると警告し、必要な燃料在庫を持つ義務を有するライセンス保有の電力事業者に対し、石炭在庫を過小報告していないか史上初の臨時検査を行った。NEURCのValerii Tarasiuk委員長は、報道に対し「違反した場合、罰金か免許剥奪いずれかとなる。後者であれば深刻な措置となり発電停止を意味し、こうした事は過去一度もなかった。これは最後の手段である」と言及した。

10日、DTEKのTimchenko社長は、今回の事態を「発電会社の財務的大虐殺」と称し、「ウクライナの選択肢はEUエネルギー市場と連携・統合か、ロシアやベラルーシからの石炭輸入依存度を高めるかのいずれかであり、前者であれば競争が高まり、価格が下がり、提供されるサービスの質が向上する。政府は賢明な選択をしなければならない」とツイートしている。なお、ウクライナの電力の4分の1を発電するDTEK社は2015年以降、石炭生産を削減しつつ、ロシアやベラルーシからの石炭輸入に依存する傾向が強まっている。DTEK子会社で国内一般炭生産の90%を担当するDTEK Energyは、2020年に石炭生産量を16%削減した。他方、DTEKは石炭輸入量を3倍の45万トンに増やす計画で、ロシアの他、2月からポーランドとカザフスタンからも輸入する。ただTimchenko氏は、ロシアとベラルーシからの石炭への依存度が高まると、市場の不均衡が生じ、消費者の電力価格が上昇すると警告している。

統計局も2020年末には国内石炭生産が13.8%減少した報告をしており、これに対しLovochkin議員は政府の無策で国内石炭部門で資金不足が発生し、今回の事態となったと批判した。議員は「危機発生についてCOVID-19ロックダウンは、鉱業企業が制限対象に含まれず理由とはならない。理由は別にあり、政権が鉱山労働者への給与未払いを起こし、2020年を通じ、鉱山労働者が内閣と交渉していた事に由来している」と述べた。ちなみに2020年9月、給与未払いを巡りナディヤ炭鉱で坑内ストが発生しており(2020.09.10付『ナディヤ炭鉱で給与未払に対する坑内スト』参照)、ウラン鉱山、鉄鉱山でも同様のストが発生している。

15日、Vitrenkoエネルギー大臣代理は、ロシアやロシア占領下のドンバスからの石炭輸入を避けるべく、国内の石炭生産を増やすと述べた。

(石炭開発部 宮崎 渉)

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