欧州:炭素価格上昇による欧州石炭事業への影響

掲載日:2021年3月18日

3月9日付報道、3月10日付Fitchレポート等によると、欧州の炭素価格の上昇が続けば、EUの石炭火力発電所事業が圧迫され、長期的に脱炭素化が早まる可能性があるという。

現在、EU-ETS(欧州連合域内排出量取引制度)のCO2価格は、2020年12月の31ユーロ/トン、1月の34ユーロ/トン、2021年2月に38ユーロ/トンと2020年12月以降、過去最高値を継続している。背景には2020年分の排出量をカバーするCO2排出枠を2021年4月末までに購入したこと、EU-ETSがフェーズ4(2021~2030年)に入り、2021年の一次CO2市場で入札された新たな割当量が2020年需要をカバーする目的で使用できなかったこと、一次CO2市場の最初のオークションが2021年1月末に延期されたこと等がある。また2020年の欧州における厳冬で電力需要とCO2排出枠需要増も起因する。長期的な要因としては欧州議会が2030年CO2排出削減目標を1990年比で従来の40%から55%に引き上げたことにより、2020年代の新規排出枠供給の減少が見込まれる事も背景にあるという。

こうした炭素価格上昇は、炭素集約型の電力会社の移行リスクに寄与しており、FitchレポートによればCO2価格が2021年以降も高い価格が継続した場合、石炭による発電マージンに悪影響を及ぼし、電力市場の早期脱炭素化の圧力が強まる可能性があるという。特にポーランドのような石炭資産割合が高い国では電源交換が必要なため、脱炭素化を早めるとシステミックリスクを高めることになるという。

実際、ポーランド電力会社PGEのPaweł Strączyński副社長は、9日オンラインセミナーで「ポーランドはエネルギー変革を訴えたが変革は起きなかった。しかしCO2排出枠価格が高騰し、金融機関が化石燃料融資から撤退している現在、エネルギー転換は必要不可欠である」と述べている。

(石炭開発部 宮崎 渉)

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