ロシア:水素エネルギー発展の見通し

掲載日:2021年4月1日

3月9日付の現地誌に、第4次エネルギー転換に対するロシアの見通しとして、水素エネルギー発展に関する記事が掲載されている。
 
ノヴァク副首相は2020年12月、今後20年間に世界のエネルギーバランスの中で現在85%である炭化水素資源が占める割合は15%ポイント程度の縮小になろうとの楽観的な見方を示したが、同時に、現在のエネルギー転換の動きを背景として、ロシアは今後20年の間に自国の炭化水素資源を迅速にマネタイズすることを考える必要がある、とも指摘した。
 
スコルコボ・モスクワ経営大学院のエネルギーセンター所長ミトロヴァ氏は、ロシアの燃料エネルギー産業にとって、世界的なエネルギー転換は「生産の急激な縮小と投資の枯渇」という脅威をもたらすと警告している。同氏によれば、エネルギー移行が最も緩やかであったとしても、ロシアのエネルギー輸出は2040年までに16%減少し、年平均GDP成長率は1.1%低下するという。ロシアの電源構成における再生可能エネルギーの割合は微々たるもので、2019年の太陽光発電と風力発電の割合はわずか0.15%だったとのこと。同氏は、最も野心的な計画が実行されたとしても、ロシアにおける再生可能エネルギーの割合は2035年までに2~2.5%程度、と予想している。
 
スコルコヴォとロシア科学アカデミーエネルギー研究所が作成した資料では、エネルギー資源の輸出が減少する他、炭化水素資源生産がより開発困難な鉱床へ移行することから税負担軽減を拡大する必要があり、ロシア予算の歳入減少は回避できないと指摘している。同資料ではまた、燃料エネルギー産業とその変革こそが、多大なポテンシャルを持つ省エネの実現や近代化のための産業設備需要の創出によって、国の発展及びGDP成長に資する新たな刺激を与え得るとしつつ、そのためにはエネルギー転換に国を適応させるための強力な経済・エネルギー政策が必要であり、そのための時間は7~10年ほどしかない、と指摘している。
 
ロシア政府付属分析センター作成の資料によれば、ロシアにおける水素生産は2010年から2019年にかけて約3倍、19.5億㎥に増加した。ロシアでは水素は主に、製油、化学、石油ガス化学産業で利用されている。
 
2035年までのロシアエネルギー戦略では、水素エネルギー発展の将来性は主に輸出に見出されており、世界有数の水素輸出国になるという野心的な課題を掲げている。同戦略には2024年に22億㎥、2035年に222億㎥という具体的な数値目標が記されている。
 
ロシアはアジア太平洋諸国及びEUという将来性ある販売市場に近いという利点を持つ他、資源(ガス、石炭、水)量が豊富で、しかも発電能力の余剰が大きいことにより、再生可能エネルギーや原子力の利用も含め、水蒸気メタン改質や電気分解など、様々な手法による水素生産を発展させることが可能である。
 
ロシアでも最近、水素プロジェクトが注目されるようになった。2020年10月にロシア政府は水素エネルギー発展に関するロードマップを承認。2024年に向けてROSATOM社は水素燃料による鉄道輸送のプロトタイプを開発、2023~2024年にGazprom社はメタン水素燃料で作動するガスタービンの開発・製造・テストを行うことなどが規定されている。
 
またGazprom社は2020年末、欧州に対して、ノルドストリームパイプラインで輸送されるロシア産ガスを利用した低炭素水素生産に関する大規模プラント建設を提案した。同社は、必要なインフラがあれば、2021年中にも水素供給を開始する用意があるとしている。
 
2020年12月にNOVATEK社は、ロシア初の水素発電の商用プロジェクトに着手した。独Siemens社は、ヤマルLNGプロジェクトのガス液化プラントに電力を供給する火力発電所に設置されているガスタービン8つのうち1つを近代化し、燃料の一部に水素を利用できるようにする。

(モスクワ事務所 屋敷 真理子)

おことわり:本レポートの内容は、必ずしも独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構としての見解を示すものではありません。正確な情報をお届けするよう最大限の努力を行ってはおりますが、本レポートの内容に誤りのある可能性もあります。本レポートに基づきとられた行動の帰結につき、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構及びレポート執筆者は何らの責めを負いかねます。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

レポート一覧

Adobe Reader

PDF形式のファイルをご覧いただくには、アドビシステムズ社から無償配布されているAdobe Readerプラグインが必要です。

ページの先頭へ