ブルガリア:石炭依存度が大きく、EUの気候目標はハードルが高い

掲載日:2021年4月8日

4月3日付の現地報道によると、ブルガリアのBobov Dol石炭火力発電所は、EUが廃絶しようとしている産業の象徴であり、環境保護への移行において直面している問題でもある。3日が投票日の選挙では、環境問題はほとんど話題にならなかったが、一方で、EUのグリーン移行基金(green transition funds)100億ユーロ(118億米ドル)がブルガリアの蔓延する汚職の餌食になるのではないかと批判されている。

環境保護団体は、EUが気候変動目標を達成するためには、2030年までに石炭火力発電所を廃止しなければならないとしており、EUは、それまでに排出量を55%削減することを目標としている。EUの11カ国は、2030年までに石炭火力発電所を廃止することを約束しているが、GDPあたりの温室効果ガス排出量がEU平均の4.3倍であるブルガリアは、その中に含まれていない。ブルガリアでは暖房用に石炭を多用しており、冬場の発電量の60%が石炭によるものである。1970年代に操業を開始したBovov Dol発電所では、850人の従業員が働いており、これだけでブルガリアのエネルギー生産量の約4%を占めている。

Bobov Dol社のCEOであるLyubomir Spasov氏は発電所を閉鎖しなければならないことについては、確かに心配しているが、最大限の雇用を維持することが目的だ、と述べた。同氏の優先事項は、ソフィア市(Sofia)にある630MWの発電所を維持することで、そのために石炭から天然ガスへの転換、さらには太陽光発電による水素プラントの導入を検討しており、この発電所は、ブリュッセルがグリーンプロジェクトのために用意した100億ユーロのEU基金の一部を得るために、今年中に申請する予定とのことである。

なお、グリーンピース・ブルガリアのDesislava Mikova氏によると、Bobov Dol発電所は地元の川を汚染し、酸性雨の原因となる排ガスも多量に発生しているという。前日に車を洗っても、朝になると車が汚れていると、報復を恐れて匿名を希望した村人は語った。

汚職の害

Boyko Borisov首相率いる中道右派GERB党が日曜日の選挙で勝利することが有力視されている。首相はEUのグリーンディールを支持しているが、石炭に依存している東欧諸国に対しては、さらなる支援を求めている。しかしながら、シンクタンクECFRの最近の世論調査では、ブルガリア国民の3分の2が石炭火力発電所の閉鎖を支持しているという結果が出ているにもかかわらず、GERBは選挙キャンペーンでこのテーマを目立たせることはなかった。また、有権者の4分の3は、グリーン移行に関する各政党の立場を知らなかった。ソフィア大学産業経済・経営学部のMaria Trifonova助教授は、ブルガリアでは、選挙で選ばれた人たちがこのテーマに取り組むことを恐れていることが原因のひとつだ、と述べている。昨年の夏に始まった大規模な反汚職デモの後、汚職との戦いはより大きな問題となっている。

NGOのTransparency Internationalは、ブルガリアをEU諸国の中で最も腐敗した国と評価している。少数派野党「Da, Bulgaria!」の党首であるHristo Ivanov氏は、EUのグリーン補助金がブルガリアの新興財閥を潤すことになるのではないかと懸念している。EU基金の60%は、これらの汚職から最も苦しんでいる部門である公共インフラに投資されなければならない、と2014年に意見の相違により大臣を辞任し、その後、国内で最も率直な反不正行為活動家の一人となった元法務大臣のIvanov氏は語った。同氏は、グリーン移行の資金援助を受ける可能性のある発電所(Bobov Dolではない)が、政治的につながりのある著名な新興財閥によって所有されていることを指摘した。

(石炭開発部 奥園 昭彦)

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