南アフリカ:EskomはGrootvlei、Komati、Hendrina石炭火力発電所の閉鎖が近づき、公正なエネルギー移行の枠組みを最終決定するために取り組む

掲載日:2020年11月26日

11月17日付の現地報道によると、国営電力会社Eskomは、2040年までに閉鎖が予定されている10カ所の石炭発電所のうちの最初に閉鎖となるプマランガ州のGrootvlei、Komati、Hendrina発電所の閉鎖計画について、3月末までに社会経済的影響の調査を完了する見込みである。この3カ所の発電所の閉鎖は、今後5年間で行われると予想されており、同社は、再生可能エネルギー、ガス、バイオマス、蓄電池、水素などの代替発電技術を使用して、いくつかの発電所のリパワーリング(repowering)の可能性を評価するプロセスを開始した。また、同社は並行して、跡地を農業や用水供給事業(bulk water services)の提供、水処理などの非エネルギー関連の経済活動に再利用するための計画を評価している。
 
Eskomの公正エネルギー移行オフィスのMandy Rambharos所長は、会社は再生可能エネルギーへの直接投資に意欲的だが、石炭火力発電所のリパワーリングは、財政的に困難な状況にあることから、民間投資家とのパートナーシップで追求する必要があると述べた。しかし、同社は、いわゆる公正なエネルギー移行取引(just energy transition transaction)を実施できるかどうかを評価しており、これにより温室効果ガスの排出削減を加速する見返りに、補助金や譲許的な気候資金を確保できる可能性があり、クリーンエネルギーソリューションへの投資を可能にするだけでなく、このような取引は、同社が現在約4,840億ランド(約315億USD)に上る持続不可能な債務の削減や借り換えにも役立つだろう。
 
また、同氏は、17日に行われた産業政策戦略(Trade and Industrial Policy Strategies)により支援された一連の「公正移行オンラインセミナー」の中で、COVID-19のロックダウン制限の結果、利害関係者の関与セッションの開催が当初遅れていたにもかかわらず、3カ所の発電所の社会経済的影響の調査は順調に進んでいると報告した。調査では、発電所の閉鎖が従業員やコミュニティだけではなく、環境、土地利用、地域経済、国の経済に与える影響について評価している。
 
Eskomは、このプロセスを利用して、よりクリーンな電力システムへの移行を促進しつつ、石炭関連労働者や地域社会にとっても公正な方法で発電所の閉鎖を管理するための枠組みを確立することを目指しており、2050年までは石炭火力による発電を行う予定であるにもかかわらず、最近2050年までに温室効果ガスのネットゼロを達成するというビジョンを発表した。ネットゼロ目標を達成するためには、炭素クレジットの購入や大気から二酸化炭素を除去するプロジェクトへの投資を通じて、残留排出量を均衡させる必要があるとRambharos氏は述べている。
 
しかし、当面の焦点は、閉鎖する発電所での可能なリパワーリングや転用計画と同様に石炭関連労働者やコミュニティと社会契約(social compact)を締結することにより、Grootvlei、Komati、Hendrina発電所の閉鎖計画を固めることである。また、この契約は、影響を受ける地域での代替経済開発や労働者の再教育のための計画も概説している。Rambharos氏は、この移行は突然の変化ではなく、段階的に実施されるとしながらも、Eskomにとっては根本的な変化であり、私たちは、「公正」と「移行」が等しく重要である公正なエネルギー移行に取り組んでいる、と述べ、その哲学を「peg in the ground(地についた釘)」と表現した。
 
注:11月17日South African Reserve Bank為替レート、1ランド=15.35USD

(石炭開発部 奥園 昭彦)

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