英国:政府は水素戦略を発表

掲載日:2021年8月26日

8月17日の現地報道によると、英国政府は17日、水素戦略を発表し、2030年までに9億ポンド規模のグリーンエネルギー産業と9,000人以上の雇用を創出し、40億ポンドの投資実現を目指し、2050年までには10万人の雇用と130億ポンドの価値を生み出す可能性があると発表した。産業界や政策立案者は、これまで最も脱炭素化が困難であった分野の環境負荷を低減し、天然ガスの使用量を削減するために、水素への期待を高めているが、必要な投資や技術的問題など課題は高い。

英国政府は、2030年後までに5GWの水素製造設備の導入を目指しており、300万世帯の家庭の暖房、運輸や企業、特に重工業に電力を供給している天然ガスに置き換えることができると試算している。この戦略は、ビジネス・エネルギー省のKwasi Kwarteng長官が「英国の水素革命の始まりを告げるもの」と述べたもので、以下のようないくつかの重要な施策が含まれている。

・ 水素と化石燃料とのコスト差を縮め、風力発電にヒントを得たビジネスモデルにより、低炭素代替燃料のコストの早期低下に貢献。詳細についての協議を開始する。
・ 水素製造プラントの商業展開を支援するための 2 億 4,000 万ポンドの「ネットゼロ水素基金」の活用についての協議。
・ グリーン水素とブルー水素の両方を支援する2方式アプローチを採用。
・ ネットゼロを目指した水素製造を確実にするための英国水素基準の策定。
・ 業界と協力して、既存のガスに20%混合して排出量を7%削減することの安全性、実現可能性、費用効果を判断。
・ 2022年初頭に水素セクター開発アクションプランを発表。
・ 炭素排出企業の排出量削減を支援するための1億500万ポンドの資金提供。

Anne-Marie Trevelyanエネルギー・気候変動大臣は、「本日の水素戦略は、我々が繁栄する低炭素水素経済を構築することにコミットしているという強いシグナルを世界に発信するものであり、それによって何十万もの高品質なグリーンジョブを提供し、何百万もの家庭のグリーンエネルギーへの移行を支援し、主な産業の主要燃料である化石燃料からの脱却を支援し、多額の投資をもたらすことができる、と述べている。

政府は、低炭素水素経済が実現すれば、2032年までに7億本の木が吸収する炭素量に相当する約4,100万トンCO2eの排出削減効果が得られると予測している。2050年までには、英国のエネルギー消費量の20~35%が水素を利用したものになり、今世紀半ばまでのネットゼロ達成に重要な役割を果たすと期待している。

一方で、低炭素社会の実現に向けて、水素をどのように製造するかが大きな課題となっている。グリーン水素であればゼロカーボンとなるが、ブルー水素であればエミッションフリーではないが、排出される炭素を回収して貯蔵し、他の用途に利用(CCUS)することになる。コーネル大学とスタンフォード大学が先週発表した研究によると、製造過程で発生する未回収の二酸化炭素と未燃のメタンの排出があるため、ブルー水素製造による炭素排出量は、天然ガスや石炭を直接熱源として使用するよりも20%以上大きいと算出された。また、短期的な懸念としてコスト問題がある。国際再生可能エネルギー機関(REA)によると、グリーン水素はブルー水素に比べて製造コストが2~3倍かかるという。

(石炭開発部 奥園 昭彦)

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