EU:EUA価格が初めて60ユーロを突破

掲載日:2021年9月9日

EUでは、電力会社がロシアからのガス調達に苦労していることや、風力発電が弱まっていることから、炭素排出枠(EUA)価格が1トンあたり約61ユーロと過去最高に上昇した。

8月30日の現地報道によると、EUの排出権取引制度(EU ETS)での二酸化炭素排出許可証の取引が30日のセッションでは低調だったため、価格の変動が激しく、ICEデータによると、EUA指標先物12月限は、過去最高水準の1トンあたり61.7ユーロの水準まで急騰した。EU-ETSは2005年に導入され、年初から85%の上昇を記録しており、2020年12月には初めて終値ベースで1トンあたり31ユーロを、2021年5月には50ユーロを超え、8月27日には59ユーロを記録している。

この急騰の背景には、投機的な買いの急増の他、ガス不足によるガス価格の高騰がある。ノルドストリーム2ガスパイプラインを巡っての、米国の反対を中心とした論争により、暖房シーズンを前にロシアから欧州の貯蔵施設への供給が滞ったことに加え、ロシア側の最大のパイプラインの1つが故障したことで、化石燃料の買い付け注文が殺到した。欧州の電力会社や地域暖房システムの運営会社は、ロシアとウクライナの紛争によって21世紀前半の10年間に勃発したような危機を回避しようとしている。

ここ数カ月、夏の暑さで冷房用の電力需要が高まったため、EUでは予備の石炭火力発電設備がいくつか稼働した。一方、化石燃料の使用にはCO2の排出許可が必要であるが、EUでは排出枠を削減しており、炭素価格が上昇しやすい環境になっている。

ドイツやスペインでは、電力料金が過去最高を記録している。また、コロナウイルスの拡大を抑制するための対策による操業停止後の急激な景気回復により、生産者や供給者が電力需要を満たせずに混乱が生じていることも重要な要因となっている。それに加えて、欧州の大部分、特にドイツでは、アナリストが風力の強さが大幅に低下すると予想しているため、自然エネルギーから化石燃料へと力点が移っている。

(石炭開発部 奥園 昭彦)

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