英国:ガス価格の高騰に伴い石炭火力発電所を再稼働

掲載日:2021年9月16日

9月8日の現地報道によると、英国は6日、電力需要を満たすために古い石炭火力発電所を稼働させた。温暖な秋の気候のため、風力発電所の発電量が通常よりも少なく、また、ガス価格の高騰によりガス火力ではコスト高になるためである。英国の電力系統運用会社のNational Grid ESO社によると、石炭火力の稼働で、石炭が国の電力に占める割合は3%となった。

この時、ESO社は、EDF社に待機中のWest Burton A石炭火力発電所を起動させるよう要請したというが、停止後の7日には、石炭火力の発電量は英国の発電量の2.3%に戻った。同社のスポークスマンによると、8月中旬に3日間石炭を使用しない日があったが、それ以降は毎日幾らかの石炭火力発電に頼っていたという。

昨年の電力構成に占める石炭の割合は1.6%だったが、これは5年前の25%から大きく低下している。政府とNational Grid ESO社は、二酸化炭素の排出量を削減するために、2024年までに石炭発電を完全に廃止することを約束しているが、ガスよりも石炭の方が経済的な場合には、石炭が使われている。

化石燃料からの脱却を推進するシンクタンク、Ember社の電力アナリスト、Dave Jones氏は、石炭廃止への道のりは順調に進んでおり、おそらく予定よりも早く到着するだろうが、ガス価格の上昇は、今後数年間にガスから自然エネルギーへの移行を加速させるのに役立つだろう、述べている。

英国政府は、発電用ガスの使用を削減することを約束しているが、期限は設定していない。今年の夏は特に、天然ガスの価格が高騰し、より多くの石炭が消費され、ヨーロッパ各地では、ガス不足とアジアからの需要増により、ガス料金が過去最高水準にまで上昇している。年明け早々の寒波により、欧州大陸の各国はガスの備蓄に手をつけた。本来ならば、需要の少ない夏場に補充されるが、各国でのCOVID-19の封鎖から再開したことによる経済の回復に伴い、予想以上の需要が発生し、ガス不足が起きた。

9月の暖かい日に英国が石炭発電を使用したことは、2つの大きな問題を提起している。1つ目は、化石燃料の使用を減らすという環境保護の公約に反すること。2つ目は、世界のガス価格が国内のエネルギーに与える影響の大きさであり、今後数ヶ月間は、ガス価格の高騰が続くと予想されている。

原子力産業協会は、石炭発電所を再稼働するという決定は、新しい原子力発電所への投資が緊急に必要であることを強調しており、そうでなければ、石炭を予備的に燃やし続けることになり、ネット・ゼロの目標を大きく下回ることになるだろう、と述べている。

(石炭開発部 奥園 昭彦)

おことわり:本レポートの内容は、必ずしも独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構としての見解を示すものではありません。正確な情報をお届けするよう最大限の努力を行ってはおりますが、本レポートの内容に誤りのある可能性もあります。本レポートに基づきとられた行動の帰結につき、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構及びレポート執筆者は何らの責めを負いかねます。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

レポート一覧

Adobe Reader

PDF形式のファイルをご覧いただくには、アドビシステムズ社から無償配布されているAdobe Readerプラグインが必要です。

ページの先頭へ