欧州:記録的なエネルギー価格により電気代が上昇し、高価な冬が到来

掲載日:2021年9月16日

9月12日の現地報道によると、欧州の電力料金を数年来の高値に押し上げた記録的なエネルギー価格の高騰は、年末までに緩和される見込みがなく、消費者にとっては電気代の上昇により高価な冬の暖房シーズンになることを示唆している。

アジアの景気回復により石炭やガス価格が高騰したことや、欧州の炭素排出許可量の引き上げ、原油価格の上昇、再生可能エネルギーの生産量が少ないことなど、さまざまな要因が重なり、EUとフランスの電力契約のベンチマークは今年に入って倍増している。EUの電力契約のベンチマークであるドイツのCal 2022ベースロード電力は、10日に97.25ユーロ/MWhの契約新記録を達成し、フランスのそれは100.4ユーロ/MWhの記録にわずかに届かなかった。

トレーダーやアナリストは、風力発電の供給パターンやロシアのガス供給が市場のワイルドカードとみなされているにもかかわらず、現在の状況では、電力供給が逼迫する可能性が高いと述べている。第4四半期と冬の始まりを見てみると、即日価格と先物価格はともにタイトな供給ファンダメンタルズから力を得ているが、涼しくて乾燥した天候の予測は、持続的な需要と水力発電の供給量の少なさを示している。

Marex Spectron社のファンダメンタル・リサーチ部門の責任者であるGeorgi Slavov氏は、天候と燃料市場に関するすべての指標が強気であるが、最大の未知数は、ロシアからドイツへのNord Stream 2(NS 2)ガスリンクで、これは2021年に稼働する可能性があり、逼迫した欧州のガス在庫を押し上げることになると述べているが、ドイツの規制当局はまだ許可を出しておらず、稼働までは、まだ数ヶ月かかる可能性がある。

欧州の産業界はCOVID-19危機による需要減から予想以上に早く回復したが、今年はアジアのバイヤーが先を争ってLNGを購入したため、ガスの輸入量は例年よりも減少し、在庫は約70%と少ない。業界団体GIEのデータによると、2020年同時期には、93%に達していた。

欧州の風速が平均より低く、風力発電所の発電量が抑制されているため、発電所でのガス需要が高くなっている。アナリストのICIS Energy社によると、ドイツの風力発電量は、過去3年の9月平均が10GWを超えていたのに対し、今後2週間の平均は1日5GWにとどまる見込みであり、これは、想定総発電量の10分の1に過ぎず、又風力発電の性質上、再び発電量が減少する期間があれば、ガスは再び高価格になるだろうと述べている。

電力価格に影響を与えるその他のコスト、例えば炭素許可証なども、変化しそうにない。EUの炭素ベンチマーク契約は、現在1トンあたり62.4ユーロとなっており、今週の最高値からそれほど変化していない。これは、排出コストを引き上げるより野心的な気候目標に支えられているだけでなく、電力需要が旺盛で買い手がより多くの許可証を必要としているためである。

燃料と炭素の複雑な関係の中で、発電事業者がガス料金の高騰を避けようとするため、石炭需要が高まっている。石炭発電所が排出する二酸化炭素の量はガス発電所の2倍であるため、炭素許可証の需要が高まり、炭素価格が上昇している。欧州の発電用石炭価格は12年ぶり、アジアでは13年ぶりの高値を記録している。

(石炭開発部 奥園 昭彦)

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