米国:健康への懸念を理由に、2027年までにサンフランシスコでのユタ州産石炭の取り扱いを禁止する和解案が成立

掲載日:2021年11月25日

11月16日の現地報道によると、カリフォルニア州サンフランシスコ港で、アジア向けに輸出するユタ州産の石炭を保管している民間の港湾業者は、和解案に基づき、2027年までの業務継続が認められた。

リッチモンド港湾当局と、港運営者であるLevin-Richmond Terminal社、ユタ州の石炭会社であるWolverine Fuel Sales社、ユタ州、そして石油コークスを輸出しているPhillips 66社との間で和解案が成立した。リッチモンド市議会は昨年、2023年1月までに市内での石炭と石油コークスの取り扱いと保管を禁止する条例を可決した。この条例は、石炭の粉塵による健康被害を懸念して制定されたものであるが、3社とユタ州は違憲であるとして、連邦および州裁判所に訴訟を起こしていた。今回の和解案では、条例は維持されるものの、3社には4年間の猶予が与えられた。

リッチモンド市と共同で訴訟に取り組んできた環境保護団体は、住民の健康被害をより適切に管理したいと考えている地域社会の勝利として、この和解を歓迎した。11月12日に成立した和解案では、2026年12月31日までに港での貯炭と石炭の取り扱いを終えることになっているが、その間、粉塵対策を強化しなければならない。この和解案が有効になるためには、来年2月までに市議会の承認が必要である。

気候変動への懸念から、米国での石炭需要は減少しているなか、ユタ州などの産炭地は、西海岸の港からアジアに向けて石炭を出荷しているが、環境保護団体や民主党議員などからは反対を受けている。サンフランシスコ港では、Levin-RichmondターミナルとStockton港が主な石炭積出港となっている一方で、長年にわたってOaklandにユタ州産石炭用のターミナルを建設しようとする試みがあったが、反対派に阻まれ続けてきた。米国エネルギー情報局のデータによると、2021年上半期のサンフランシスコ港からの石炭輸出量は、米国からの石炭輸出総量の約3%を占めている。

製品炭のほとんどを日本向けに輸出している、Wolverine Fuels社は法廷で、Richmond港を利用できなくなると、石炭の輸送時間が長くなり、場合によってはメキシコの港まで輸送しなければならなくなるため、同社のビジネスに大きな影響を与えるとともに製品の輸送ルートが長くなることで、温室効果ガスの排出量が増えると主張している。

(石炭開発部 奥園 昭彦)

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