米国:発電所の有害な石炭灰による埋立地は、EPAからの厳しい監視に直面

掲載日:2023年6月9日

5月17日付の米国メディアによると、バイデン政権は石炭火力発電所からの廃棄物となる石炭灰の処理に対する規制を厳格化する新規制案を発表した。南部の各州では、10年前から石炭灰が埋立地から溢れ出し、近隣の河川等を汚染するという問題が起こっていた。石炭の燃焼後に残る石炭灰には発癌性の高い有害物質が含まれていることが多く、米連邦規制当局は数十年前から同廃棄物処理をめぐる問題に取り組んできた。米国環境保護庁(Environmental Protection Agency: EPA)は、連邦政府の規制対象から除外されてきた、約1,000箇所に及ぶ石炭灰の廃棄場所を、新たに規制下に置こうとしている。

EPAによると、石炭灰には水銀、カドミウム、クロム、そしてヒ素といった毒性の高い汚染物質が含まれており、廃棄された石炭灰がもたらす汚染の影響は、廃棄場所からほど近い場所にある、貧困層やマイノリティが多く居住するコミュニティにおいて特に深刻化している。EPAのマイケル・リーガン(Michael Regan)長官は、貧困層及びマイノリティが主流のコミュニティの多くが、「他地域よりも深刻な被害を被っており、今次新規制案は米国の人々の健康と我々を取り巻く環境への守りをより万全にすると同時に、電力供給の信頼性を維持し、価格を低く抑えつつ、電力セクターからの汚染物質の排出を削減することを目指す、EPAの広範に渡るコミットメントを反映したものである」と述べた。

本件規制案は、稼働中の石炭火力発電所施設内の使用しなくなった廃棄場所への環境規制の適用除外を認める、2015年施行の規則を改定するものである。EPAは、連邦政府による規制の適用対象とならない廃棄場所にも適用し、廃棄物の適切な処理を義務付けることで、地下水の汚染問題に対処することができると述べた。本件新規制で新たに対象とされることとなるのは、141基の発電所にある合計261の廃棄場所である。加えて、現在既に規制対象となっている29箇所の埋立地も、今後更に厳格な規制を適用されることとなる。

発電所は、米国における毒性のある物質の漏洩による水質汚染の主要な原因となっている。石炭灰の廃棄場所の大半は、大西洋岸中部地域から中西部に渡る、米国東部に集中している。

2020年、トランプ政権は石炭灰の処理に関する規制を緩和しており、当時のEPAは、同措置によって石炭業界は年間1億4,000万ドルのコスト削減が可能となったとしていた。

(ワシントン事務所 三田部 真理)

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