米国:EIA短期エネルギー見通し: 2023年8月分(石炭)

掲載日:2023年8月25日

8月8日、米国エネルギー省エネルギー情報局(U.S. Energy Information Administration: EIA)が月例の短期エネルギー見通し(Short Term Energy Outlook: STEO)を発表した。8月公表のSTEOにおける米国の石炭に係る主な見通しの概要は以下の通りである。
 
米国の全電力供給量に占める、再生可能エネルギー由来の電力の割合は急速に拡大しており、更に太陽光発電容量は2023年末までに27ギガワット、2024年までには31ギガワットが追加される見通しである。このことから太陽光発電は、今後も拡大の一途を辿ると考えられる。
 
その一方で、2023年末までに発電容量にして15ギガワットに相当する石炭火力発電所が閉鎖される予定であることから、2022年には20%であった、石炭由来の電力供給量が全電力供給に占める割合は、2023年末までに16%に、2024年までには15%まで、それぞれ縮小すると予測している(図1参照)。

出所:U.S. EIA 「Short Term Energy Outlook August 2023」
図1 電力セクター別発電容量(左)およびエネルギー源別発電量(右)

石炭生産量は2022年の5億9,700万ショートトンから、2023年には5億7,800万ショートトン(3%減)に、2024年には更に低下して4億7,200万ショートトン(18%減)になると予測している。石炭生産量の減少は、天然ガス価格の低下と、輸送の限界費用がゼロである太陽光発電との競合で苦境に立たされることにより、電力セクターにおける石炭需要が低下すると見られているためである(図2参照)。

出所:U.S. EIA 「Short Term Energy Outlook August 2023」
図2 米国の石炭生産量(左)および年別生産量変化(右)

米国で生産される石炭の大半は国内で消費されているが、2023年前半には全生産量の17%(5,000万ショートトン)が海外に輸出された。同輸出の割合は、2022年前半には15%(4,400万ショートトン)であった。米国の石炭生産量に占める輸出の割合は今後更に拡大し、2024年の輸出量は22%(1億300万ショートトン)となると予測している。
 
2022年8月に欧州がロシア産石炭の輸入を停止したことにより、米国産一般炭の輸出量は、過去18ヶ月間で2倍以上に拡大した。米国外で、鉄鋼業で利用される原料炭の安定的な需要があることは、米国における石炭生産を後押ししている。そして米国産の原料炭は、鉄鋼業者が求める高品質のものであることから、通常、高値がついている。これらのことから、米国における石炭生産に対する国内需要の縮小による影響は緩和されている(図3参照)。

出所:U.S. EIA 「Short Term Energy Outlook August 2023」
図3 米国の石炭生産量全体からみた輸出量の割合

2023年の二酸化炭素の総排出量は3%減少し、石炭由来の排出量については、石炭火力発電量の低減により、2022年比で20%減となると予測する。2024年の総排出量は、石油製品と石炭由来の排出量が、天然ガス由来の排出量の拡大を相殺し、ほぼ横ばいの状態が維持されると予測している。米国経済における炭素強度(総エネルギー消費量に対する二酸化炭素総排出量)は、2023年に2%減、2024年には1%減となり、大枠において低減する傾向が維持されると見られる。2023年の炭素強度の低減は、石炭由来の排出量の大幅な減少と、排出量ゼロのエネルギーの消費量の拡大によるものである(図4参照)。

出所:U.S. EIA 「Short Term Energy Outlook August 2023」
図4 米国経済における炭素強度



 

(ワシントン事務所 三田部 真理)

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