米国:米国環境保護庁が公表した火力発電所に対するGHG規則案の審議状況について

掲載日:2023年9月8日

5月11日に米国環境保護庁(EPA: Environmental Protection Agency)は石炭および天然ガス火力発電所の新しいGHG排出基準及びガイドラインを発表した。ガイドライン要件はユニットの種類(新規または既存、ガスタービンまたは蒸気タービン、石炭火力または天然ガス火力発電など)、運転頻度(ベースロード、中間ロード、低ロード/ピーキング)、運転計画によって異なる。

新たに発表された石炭火力発電所に係る基準およびガイドラインは以下のとおりであった:

既存の化石燃料焚き蒸気発生発電設備(主に既存石炭火力)については、CCS の適用と天然ガス混焼の可能性を反映し、同発電設備の新しい排出ガイドラインを設定する。
なお、2039年12月31日以降も継続的長期的に操業する石炭火力蒸気発電設備の排出削減の最善システム(BSER: Best System of Emission Reduction)は、CO2を90%回収するCCSを使用する。
  
新規・改築・改造の石炭火力発電所の基準については、CCS に基づく新規石炭設備および効率に基づく改築石炭設備に対して2015年に設定済の基準を引き続き適用する。
また、EPA では今後本件の新設設備がないと予想し、新設および改築の基準を見直さない判断をした。90%回収される CCS の BSER に基づくかたちで改造ユニットの基準を見直し、改定することを前提としている。

EPAは現在、このGHG規則案に対するパブリックコメントを検討中であり、2024年半ばまでに発電所のGHG基準に関する最終規則を発表する意向を表明している。

現地の情報によると、米国産業界の主要な利益団体は、EPAの要求を満たすインフラ整備不足や将来的な信頼性の高い伝送網整備に対する欠如リスクを引き合いに、炭素回収・貯留(CCS)やGHG削減に資する水素混焼などのGHG緩和技術の商業的利用可能性に関する前提条件や規制の実施移行期間といった、EPAが提示する「実証されていない」技術的前提について様々な懸念を表明している。

(ワシントン事務所 三田部 真理)

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