EU:欧州理事会と欧州議会、メタン排出に対処するためのEU初の新規則で合意

掲載日:2023年12月8日

11月22日付の欧州のメディアによると、欧州理事会(EU Council)および欧州議会(European Parliament)は、11月15日、エネルギー部門におけるメタン排出に取り組むための初の規則について暫定的に合意した。

この規制は、石油、ガス、石炭の各部門に対し、メタン排出量の測定、報告、検証を行うとともに、メタンの漏洩の検知とその漏洩修復、メタンガスの通気とフレアリングに対する制限など、メタン排出を削減するための措置が導入される。また、EU域内へ輸入する石油、ガス、石炭からのメタン排出の透明性を確実にするため、輸出国に対するモニタリングツールも提唱している。

本規則が施行された後、2027年までには、EU域内のすべてのメタン発生源に対する報告義務が発生する。事業者は排出源および操業段階で排出されるメタンの排出量を報告しなければならない。鉱山操業者については、操業中の鉱山についての排出源レベルのメタン排出量の報告に加え、閉山および廃坑についてもモニタリングが求められる。これに対し所轄官庁は規則要件が遵守されているかを定期的に検査することになる。尚、閉山または廃坑してから70年以上経過している炭鉱は、規制の義務の範囲に含まない。

メタンガスの漏洩検知・修復(Leakage Detection And Repair: LDAR)システムについての規制は、メタン漏洩が確認された場合、水中漏洩は1時間当たり17グラム、地下漏洩は5グラム、地上漏洩は1グラム以上という閾値を基準とし、事業者はメタン漏洩の修復を行わなければならない。また、欧州委員会は規則施行1年以内に基準値を再設定する権限を与えられる。

EU域内への化石燃料の輸入に係るメタンガスの規制については、欧州理事会と欧州議会がまず第1段階として、メタン排出国に対するモニタリングツールおよび規制メカニズムの構築に重点を置くことに同意した。その後、EUへの輸出業者においても2027年までに同等のモニタリング・報告・検証措置が適用される。メタン強度の最大値については、欧州委員会が2030年までに設定する権限を持つこととなる。

CO2とは異なり、メタン排出については現在、EUにおいて法的な追跡も対策もされていない。この規則提案は2020年のEUメタン戦略で示された戦略的ビジョンに続くものである。この規則に対する暫定的合意は、今後、欧州理事会および欧州議会による承認を得なければならない一方、正式な承認は形式的なものと考えられている。

(石炭開発部 福水 理佳)

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