カナダ:Glencoreが買収提案を行うTeck社の原料炭事業は厳しい環境規制を受ける可能性

掲載日:2024年1月26日

2023年12月14日付の地元メディアによると、GlencoreがTeck Resources社(Teck社)の製鉄用石炭事業の77%の買収提案を行っているが、同社が保有するブリティッシュコロンビア州 (BC州) にあるElk Valley炭鉱から排出される水質汚染に対し、米国カナダ両政府が調査を要請するところまできているとGuilbeaultカナダ連邦環境相はインタビューの中で明らかにした。同社の原料炭事業は、より厳しい環境浄化義務に直面する可能性がある。米国カナダの共有水域をめぐる紛争を防止・解決するため、1909年に両国間で結ばれた境界水域国際条約(Boundary Waters Treaty)に基づき設立された、カナダとアメリカの国境沿いの広大な水域および水路に影響する問題を扱う国際合同委員会(International Joint Commission:IJC)が調査を実施すると見られる。

アメリカ地質調査所(United States Geological Survey :USGS)の調査によれば、Teck社は2014年以降、汚染対策で12億カナダドルを投資しているものの、Teck社の廃石からは何十年にもわたり近郊の河川にセレンが溶出され、両国にまたがるKoocanusa湖における2022年のセレン濃度は5.77マイクログラム/リットルと、カナダ政府のガイドラインで定められているセレンの許容量1マイクログラム/リットルを遥かに超えている。 

一方、同社は既存の4つの水処理施設ではセレンを95%~99%除去していることからセレン濃度は安定しており、河川下流に向かって減少するとともに、新たな処理施設も稼動する予定だと述べている。だがUSGSの調査によると、同社の処理施設は秋から冬の低水量期においてはセレン濃度を下げるのに効果的だが、春から夏の水量が多い時期には下流に流れるセレンの濃度と量を下げる効果は低いとの結果が出ている。

両国政府から調査の要請が行われた場合、IJCは両国から同数の専門家を集めた委員会を設置して問題を調査する。最終勧告には拘束力はないが、通常は政府が政策を実施するという。最終的なIJCの報告書には5年程度かかると見られることから、その間Glencoreは採掘を継続できると考えられる。

(バンクーバー事務所 佐藤 佑美)

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