米国:EIA短期エネルギー見通し:2024年4月分(石炭)

掲載日:2024年4月19日

4月9日、米国エネルギー省エネルギー情報局(U.S. Energy Information Administration: EIA)が月例の短期エネルギー見通し(Short Term Energy Outlook: STEO)を発表した。4月公表のSTEOにおける米国の石炭に係る主な見通しの概要は以下の通りである。
 
今次STEOの予測における米国の発電量の成長を牽引するのは、再生可能エネルギー由来の電力となると見られている。太陽光発電容量の拡大により、天然ガス火力発電施設における発電量の伸びは、天然ガス価格が低水準で推移することが予測されるものの、鈍化することになると予測している。また、天然ガス価格の下落は、石炭火力発電由来の電力供給量の減少をもたらすと考えられ、米国の全供給量に占める石炭由来の電力の占める比率は、2023年には17%であったが、2024年には15%、2025年には14%と下降線と辿ることになると予測する(図1参照)。

出所:U.S. EIA 「Short Term Energy Outlook April 2024」
図1 米国の電力セクター別発電容量(左)およびエネルギー源別発電量(右)

3月26日に起こった、フランシスコ・スコット・キー橋の崩落事故により、メリーランド州ボルチモア港が閉鎖されたことを受け、今次STEOでは米国の4月の石炭輸出量予測を、先月の予測から約300万ショートトン(約30%)、5月には200万ショートトン(約20%)をそれぞれ下方修正した。ボルチモア港は、石炭の輸出量において国内第二位の港である。
 
EIAではフランシスコ・スコット・キー橋の崩落事故が、米国の石炭輸出の長期的な展望に深刻な影響を及ぼすとは見ていない。米国産石炭の国際需要を支えているのは品質と価格であり、それまでボルチモア港から輸出されていた石炭の一部は、国内の他の港から輸出されることになると考えられる。しかしながら、崩落事故の影響は少なくとも5月まで尾を引くと考えられ、またボルチモア港の閉鎖期間や、同港の運営再開後の状況の不透明さも、石炭輸出にとっての障害となると予想される。そのため、今次STEOでは2024年の米国からの石炭輸出量を、先月STEOでの予測から6%減となる、9,400万ショートトンに下方修正した。2025年の輸出量については、先月の予測とほぼ同じであり、1億500万ショートトンに増加することになると見ている。
 
また、冒頭述べた再生可能エネルギーによる発電量の増加と天然ガス価格の低下により、EIAは2025年に向けて、石炭火力発電量の減少およびこの結果が電力部門の石炭消費量の減少となると予想している。さらに、2024年の第2四半期に輸出が一時的に減少し、電力消費量が減少するため、米国の石炭生産量をSTEO3月分の予測比で4月に5%減、5月に4%減となる見通しである。このような予測から、今次STEOでは2024 年の石炭生産量の予測を約4億8,500万ショートトンに引き下げている。
 
 

(ワシントン事務所 三田部 真理)

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