フィリピン:2030年まで既存石炭火力発電の継続利用の意向

掲載日:2024年6月28日

6月20日付現地報道によると、ラファエル・ロティリヤエネルギー大臣は、フィリピン商工会議所が主催したフォーラムの場で、2030年までの6年間について、築年数の新しい石炭火力発電所をベースロード電源として最大限に利用する意向を示した。

フィリピンエネルギー省(DOE)のデータによると、フィリピンには、築10年以内の信頼性の高い石炭火力発電所が6,300メガワット以上あり、少なくともあと30年間は稼働できるという。4,700メガワットを超える信頼できる石炭火力発電所は11年から30年経過しており、592メガワットは36年以上経過している。

ロティリヤ大臣は「我々は、電力構成の再エネ割合を増やす取り組みと並行して、十分なベースロード容量を確保する責任を放棄するつもりはない。我々はエネルギー転換の様々なシナリオに備えており、これら石炭火力発電所の築年数が比較的新しいことから、2030年まで十分なベースロード容量を確保できる」と述べた。

また、既存エネルギー施設を最大限に活用することで、経済と消費者の両方に追加のコスト負担がかかるのを避けることができると強調した。

DOE長官によると、フィリピン経済は輸入炭に過度に依存しており、2023年はフィリピンの石炭供給のうち83%が輸入によるものだったと指摘。同長官は「これによりフィリピンの脆弱性が露呈し、代替資源を求める狂った争奪戦が始まった」と述べ、「我が国の石炭は発熱量が低いため、石炭火力発電所の要件を満たすことができない」と語った。

ロティリヤ大臣はまた、国のエネルギー安全保障と持続可能性を確保するため、電力源、特に国内の電力源を多様化する必要性を強調した。「石炭火力発電所の建設については既に一時停止措置(モラトリアム)が取られているが、確約済み、暫定的、拡張計画については例外も設けられている」と述べ、石炭火力発電所の開発を阻んでいるのはモラトリアムではなく市場そのものにあるとした。また「資金不足、保険料の高騰、炭素税や炭素価格設定のリスクが、新規石炭プロジェクトを阻んでいる」とロティリヤ大臣は付け加えた。

DOEは2020年10月から石炭モラトリアムを実施し、承認を求めるグリーンフィールド石炭火力発電施設プロジェクトの申請処理を禁止している。

(石炭開発部 宮崎 渉)

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