英国:スターマー新政権、新規炭鉱承認決定は法律上の誤りだったとして、訴訟から撤退

掲載日:2024年7月19日

7月11日付現地報道によると、英国のスターマー労働党政権は、イングランド北西部カンブリア州における新規炭鉱の承認決定は法律上の誤りがあり、高等法院での訴訟から撤退した。

ウェストカンブリア原料炭鉱開発計画は2022年12月、前保守党政権マイケル・ゴーヴ大臣により30年ぶりに承認されていたが、運動家による法的異議申し立てにより、来週高等法院で審理される予定だった。

11日、アンジェラ・レイナー副首相兼住宅・コミュニティ・地方自治相は、先月のホースヒルを巡る最高裁判決(※)を踏まえ、2022年の許可決定には「法律上の誤り(error of law)」があったことを認め、翌週に予定される法的異議申し立ての弁護を行わず、計画許可決定を破棄すべきと裁判所に通告した。

※6月20日、最高裁は、イングランド南東部サリー州ホースヒルの石油採掘計画に対し、計画当局がプロジェクトの気候への影響を適切に評価し、燃料の燃焼から必然的に生じる下流のGHG排出量を具体的に評価しない限り、化石燃料生産の計画許可は付与されるべきではないと却下する判決を出した。

運動家は環境影響評価の際に、地下からの採掘だけでなく燃焼による排出も考慮する必要があると主張し、産業界は所謂「下流」の排出量は他の評価に織り込まれその必要はないとしている。

なお政府は弁護から撤退したが、被告のWest Cumbria Mining(WCM)社が争うことを決めれば、この裁判はまだ継続する。仮に計画許可の決定破棄に裁判所が同意した場合、プロジェクト中止を意味するものではなく、改めて大臣に差し戻され、プロジェクトが引き起こす排出ガスに係る全ての正しい情報を得た上で再度決定が下される。ただし労働党は選挙前に化石燃料プロジェクト新規認可を停止すると公約しており、本計画に許可を出すことはないとみられており、炭鉱が最終的に承認されるかどうか疑問視されている。

(石炭開発部 宮崎 渉)

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