南アフリカ:大統領気候委員会、排出削減目標を達成できない可能性について警告

掲載日:2024年8月2日

7月24日、南アフリカの大統領気候委員会(Presidential Climate Commission:PCC)は「南アフリカの気候行動の現状(The State of Climate Action in South Africa)」を公表した。PCC報告書では、規定された電力建設および廃止計画を含む2019年統合資源計画などの主要政策が達成されなければ、排出量削減義務(NDC)の2030年目標は達成されない可能性があると警告している。

「エスコムが最近カムデン(Camden)、グルートブレイ(Grootvlei)、ヘンドリーナ(Hendrina)の最も古い石炭火力発電所3カ所の廃止を更に延期する決定をした。この見通しは適切と思われる」新任のディオン・ジョージ林業・漁業・環境大臣は次期NDCに係る幅広い協議を約束した。

エスコムの石炭火力発電所に最低排出基準の遵守を義務付けた国家大気質管理担当官(NAQO)の決定に対し、2023年10月にエスコムの上訴が認められており、次期NDCではこれを考慮する必要がある。エスコムは大気汚染制限を満たすために発電所を改修する費用が3,000億ランドと法外な額になるため、この決定により3万MWの発電設備が停止し、停電が悪化すると述べている。

PCC報告書はまた、南アフリカの強力な気候政策と公正な移行の約束が実際の結果に反映されておらず「約束と行動の不一致」が続いている事を指摘した。PCCは国家気候変動適応戦略で概説された95の行動のうち、完全に実施済みまたは現在実施中と挙げられているのは28に過ぎないと指摘している。

PCC報告書は、「石炭火力発電の段階的廃止のペースに関する合意が得られていないため、2023年統合資源計画、統合エネルギー計画、南アフリカ再生可能エネルギーマスタープランの草案など、移行の準備と実現に必要な政策措置の実施が遅れている」と、特にエネルギー部門の将来に関して矛盾した政策と立場があることが述べられている。

PCC報告書の発表は、南アフリカの国家的な気候変動対応の法的義務を定め、PCCの役割を制度化する気候変動法案にシリル・ラマポーザ大統領が署名したわずか数日後に行われた。

(石炭開発部 宮崎 渉)

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