インドネシア:政府、2030年までに13基の石炭火力発電所を廃止することを検討

掲載日:2024年9月6日

8月27日付の地元メディアによると、エネルギー・鉱物資源省(ESDM)は、ネット・ゼロ目標に向けた排出削減努力の一環として、バンドン工科大学(ITB)と国連プロジェクトサービス(UNOPS)が共同で実施した調査により、2030年までに13基の石炭火力発電所を廃止することを検討している。

ESDMによると、13基の発電所は、経済的耐用年数、排出量レベルなどの複数の要因から、早期廃止の候補として特定された。これら発電所の総発電容量は4.8GWと推定され、全体で約4,800万トンのCO2を排出していると同省は述べた。なお同省は、13基の発電所の石炭消費量については明らかにしていない。

13基の発電所はすべて国営電力会社PLNが所有しているため、IPP(独立系発電事業者)に比べ、廃止が比較的容易である可能性がある。同省は対象となる13の発電所を明らかにしていないが、優先的に閉鎖する3つの発電所を挙げており、その1つはバンテン州にある4GWのSuralaya発電所のうち、1984年から稼働している2GWの古いユニットの閉鎖を検討している。これらのユニットは経済的耐用年数が終わりに近づいており、排出量も多いため、早期閉鎖の有力候補となっている。

Suralaya 発電所はジャカルタ市の主要な電力源のひとつだが、1,000万人都市の大気汚染レベルが高い原因ともなっていると非難されている。

ジャカルタ市民は、慢性的な交通渋滞や工場からのばい煙、石炭火力発電所からの有害な大気に苦情を訴えており、一部の市民は、2021年に政府に大気汚染を抑制する措置を講じるよう求める民事訴訟を起こし、勝訴している。

Suralayaのいくつかのユニットの閉鎖を検討している一方で、PLNは能力増強を図っている。インドネシアのBarito Pacific社との合弁会社PT Indo Raya Tenagaを通じて、PLNはジャワ島とバリ島に電力を供給するため、Suralayaに2GWの近代的石炭火力発電所を建設するという計画である。新たな電力供給体制は8月末までには稼動する予定であると地元メディアが報じている。

この調査で選定されたもうひとつの発電所は、PLNの4GW規模の Paiton発電所である。同省はまた、西スマトラにある200MW規模のOmbilin発電所の閉鎖も目指している。同発電所は主にピーク調整発電所として利用されており、追加電力供給が必要な場合にのみ稼働する施設であるため、閉鎖しても地域社会に与える影響が極めて小さいことを意味する、と同省は述べた。

ESDMは現在、特定した発電所を廃止するための省令を起草中である。

(石炭開発部 佐藤 譲)

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