ポーランド:政府、今後1年以内に国有企業からの石炭資産分離計画修正を検討中

掲載日:2024年9月13日

9月3日付現地報道によると、ポーランドは今後1年以内に、主要な国有企業に対する石炭資産分離に係る修正計画を打ち出す準備を進めているという。

ヤウォロフスキ国有財産大臣は「政府は現在、すべての資産を新しい事業体に大量に移管するのではなく、各石炭生産部門の状況を分析している」と説明した。

EUで最も石炭依存度の高いポーランドは、エネルギー転換に苦戦しており、前政権は石炭資産を電力会社から切り離し国家エネルギー安全保障機関(NABE)と呼ばれる別法人に移す計画を立てたが完了させることができなかった。現政権下で国有財産省は、NABEのような別法人管理以外の選択肢を模索しており、石炭資産を閉鎖するか近代化するか、運転を継続するか決定するため、各発電所の詳細な分析を実施している。

この計画はポーランドの大手エネルギー会社、PGE、Enea、Tauronの経営に大きな影響を及ぼし、金融市場の圧力に対し国内エネルギー企業の将来を明からにすることを目的としている。現在、石炭火力発電所の収益性は低下しているが、環境意識が高まる銀行は、石炭火力の段階的廃止と炭鉱閉鎖の明確な計画を打ち出すまで、エネルギートランジションプロセスに参加したがらない。企業財務を安定させ市場での地位を維持するため、適切な対応策を示す事が不可欠となっている。格付機関のフィッチ・レーティングスは、石炭資産に係る明確な戦略がなければ国有企業は信用格付けを引き下げられるリスクがあると警告している。

一方で石炭火力発電所の閉鎖は、特に石炭産業に依存する地域の経済・社会に大きな影響を及ぼす可能性があるため、いかなる分離計画も、地域経済構造への悪影響を最小化するよう労働者と地域社会への付随措置を組み入れなければならない。

経済的要件と市場制約のバランスが重要であり、石炭の段階的廃止を積極的に推進すればエネルギー部門が不安定になりかねず、あまり遅いと企業財務を悪化させかねない。政府は部門再編成を進めながらできるだけ効果的にリスク管理する「中道」の解決策を模索している。

同大臣は「ポーランドの電力の60%以上を供給している石炭火力発電所の将来計画を立てる際、政府は電力需要、コスト、環境、影響を受ける地域社会や労働者の利益を考慮する必要がある。電源構成を見ればまだ石炭発電所を止める余裕がないことがわかる。しかし、正しい軌道を見つけることが重要である」と言及し、「オープンマインドで、白紙の状態で決断を下す必要がある。どうなるかはまだわからないが、1年もしないうちに明らかになるだろう」と述べた。

(石炭開発部 宮崎 渉)

おことわり:本レポートの内容は、必ずしも独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構としての見解を示すものではありません。正確な情報をお届けするよう最大限の努力を行ってはおりますが、本レポートの内容に誤りのある可能性もあります。本レポートに基づきとられた行動の帰結につき、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構及びレポート執筆者は何らの責めを負いかねます。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

レポート一覧

Adobe Reader

PDF形式のファイルをご覧いただくには、アドビシステムズ社から無償配布されているAdobe Readerプラグインが必要です。

ページの先頭へ