英国:ウェルシュ・ハイランド鉄道における排気ガス問題

掲載日:2024年11月8日

10月29日付地元記事によると、英国ウェルシュ・ハイランド鉄道による排気ガスにより、グヴィネズ州カーナーヴォンに住む地元住民が体調を崩しているという。

居住地区は鉄道の20フィート高いエリアにあるが、地元住民の1人は「ひどく刺激臭のある煙が家の中に入ってくることをとても心配している。屋内の空気中に煙が漂っているのが見える」として「この鉄道は娯楽用であり、我々は健康を第一に考えるべきである。この問題を解決できないのであれば鉄道を運行すべきではないかもしれない」と語った。

2024年はハロウィンシーズン終了で運行を終え、住民はクリスマスシーズンを除いて一時的な安堵を期待している。しかし来年6月にまた状況が再発すると予想している。地元住民は「石炭は昔は良かったし、本当に素晴らしかった。列車が見えて、列車の音も聞こえた。しかしウェールズの炭鉱が閉鎖され、2年前から石炭調達に苦労し始めて以降、問題が本格化し始めた。鉄道会社側はおそらく海外から石炭を購入しており、彼ら自身もそれが汚染された石炭だと認識しているが、他に選択肢がないのだ」と語った。

ウェルシュ・ハイランド鉄道の社長であるポール・ルーウィン氏は「我々は10年以上にわたりウェールズ産の乾燥した石炭を燃焼させてきた。これはロールス・ロイス社が蒸気機関車に採用した材料であり、無煙炭なので非常に高温で長時間燃焼し、煙もほとんど出なかった」と語った。

また「我々にとっての問題は、2021年にウェールズ政府がフォス・イ・フラン(Ffos-y-fran)炭鉱を閉鎖しウェールズでの石炭生産停止を決定したことだ」と語り、現在、良質の石炭を手に入れるのは難しいと述べた。歴史ある鉄道は輸入炭を購入しているが、伝統的な供給源は採算が取れず、良質な石炭を産出する炭鉱は戦争で荒廃したドンバス地方とシベリアにあるが、シベリア炭はウクライナ戦争で現在輸入禁止となっている。

ルーウィン氏によると、現在はポーランドやコロンビアからの輸入炭と無煙燃料を混焼させているが、その混合は困難であるという。「時々、混焼を間違え、排気ガスを出すこともある。我々もお客さんも煙を求めていないので、慎重に対処するようにしている」と語った。また同氏は、鉄道会社は近隣住民には同情すると述べつつも、地元雇用を担う事業であるため、閉鎖は選択肢ではないと付け加えた。ウェルシュ・ハイランド鉄道としては最良の燃料を探していたが、その調達は業界全体の問題だったと彼は語った。

(石炭開発部 宮崎 渉)

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