英国:政府、炭鉱労働者年金制度からの政府資金引出しに係る契約を破棄

掲載日:2024年11月8日

10月31日付地元記事によると、30日にレイチェル・リーブス財務大臣は、炭鉱労働者年金制度(MPS:Mineworkers' Pension Scheme)から政府が数十億ポンドを引き出すという契約を破棄し、その全額を元炭鉱労働者と家族に引き渡すと発表した。

1994年のBritish Coal社民営化の際に締結した契約に基づき、政府は基金の剰余金の半分を受領する権利を有し、過去30年間で48億ポンドを受領してきた。今回の変更で約15億ポンドが11万2000人の元炭鉱労働者及び家族の年金に振り込まれることになる。

大臣は「我が国を動かしてきた労働者が、当然受け取るべき公正な年金を受領する」ことを意味すると言及した。

また炭鉱労働者年金制度理事会のゲイリー・サンダース議長は「組合員の財布に更に資金を入れることができることを嬉しく思う。長年にわたり本件のこの計画へ支持を示してきた多くの議員や国会議員にも感謝する」と述べた。

2024年7月の総選挙中、労働党は残りの年金基金を返還することを公約に掲げていた。2024年3月の地元報道では、過去3年間にこの計画から4億2,000万ポンド以上が政府の財源に流入していたことが明らかになっていた。2021年、超党派の議員グループが政府に対し資金の引き出しをやめ、すでに受け取った資金の一部を返済するよう勧告した報告書があったにもかかわらず、このような結果になった。

当時の保守党の大臣らはこれらの勧告を拒否したが、情報公開法に基づき公開されたデータによると、政府はそれ以来3回にわたり年間1億4,240万ポンドの支払いを受け取っていた。

1994年にBritish Coal社が民営化された際に政府が引き継いだ年金制度の恩恵を受けているのは、主にイースト・ミッドランズ、ヨークシャー、イングランド北東部に住む何万もの世帯である。この合意は、炭鉱労働者の年金の価値が減じないことを政府が保証する見返りとして、当時の保守党政権と年金制度の管財人の間で締結された。しかし活動家らは、この契約は元炭鉱労働者とその家族にとって不公平だと長らく主張してきた。

2023年12月、当時の保守党政権のグラハム・スチュアートエネルギー長官は「政府は1994年以来、年金基金から48億ポンドを受け取っている」と述べた。

エド・ミリバンド現エネルギー長官は「政府が炭鉱労働者とその家族に渡されるはずだった資金を横領したのは何十年もの間スキャンダルだった」と述べ、「今日、そのスキャンダルは終わり、お金は正当に鉱山労働者に渡された。正義のために戦ってきた活動家たちに敬意を表したい。今日は彼らの勝利である」と述べた。

(石炭開発部 宮崎 渉)

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