バングラディシュ:アダニ・パワー社による電力供給停止問題

掲載日:2024年11月15日

10月31日から11月11日の付地元記事によると、印アダニ・パワー・ジャールカンド社(APJL)はバングラディシュ電力開発公社(BPDB)に対し、期限までに電力購入に対する支払いを行わなかったことで、電力供給の一部を停止した。

APJLはBPDBに対し、10月30日までに滞納金8億4,600万ドルの支払いを求めていた。しかし期日までに支払われなかったことから、翌日インド東部ジャールカンド州ゴッダ(Godda)地区の石炭火力発電所※からの電力供給のうち750MWを停止した。
※発電容量1,600MWのUSC(超々臨界石炭火力発電)でバングラディシュ向け専用で運用

更にAPJLは11月7日までに未払い金清算と1億7,003万ドルのL/C(信用状)提出を要求し、応じなければ全面的な供給停止の意向を示していた。

報道では、APJLはゴッダ石炭火力発電所稼働のため豪州炭を調達しその資金が早急に必要であるという。当該発電所はUSCのため、インド国内炭ではなく豪州かインドネシアから石炭を輸入する必要がある。アダニグループとしては豪州のカーマイケルプロジェクトで炭鉱を所有しインドにも輸送しているが、ゴッダプロジェクトへの供給には石炭が不足しているという。

11月4日、BPDBは1億7,000万ドルのL/Cを開設した。バングラディシュ側はAPJLに対し10月に9,700万ドルを支払い、11月に入って1,000万ドルを支払っており、7月以降、2億4000万ドルが支払われている。しかしアダニは毎週2200万ドル超の請求を行っておりいまだ多額の債務残高があるため、APJLは更に1ユニットを停止、電力供給を500~735MWに減らした。両者は今後も交渉を継続するとみられている。

バングラディシュは8月に学生主導の抗議活動によりシェイク・ハシナ政権が打倒され、ムハマド・ユヌス主席顧問率いる暫定政府が発足したが、エネルギーと外貨準備確保に苦労している。APJLとBPDBとの電力契約は2015年にハシナ政権下で締結された契約のうちの1つだが、現暫定政権はこの契約が高額であるとして契約を再評価している。IEEFAが2018年に発表した報告書では「ゴッダプロジェクトはバングラディシュにとって費用がかかりすぎであり、明らかにアダニに利益をもたらすよう設計されている。少なくとも部分的には豪州カーマイケルプロジェクトを支える試みである」とされている。

また報道によれば、今回の債務危機の背景にはAPJLによる電力料金値上げがあるとされる。BPDB関係者によると、APJLは7月以降、旧料金による支払手数料を引き継ぎ、7月以降にバングラディシュの支払い負債が増加した。BPDBは毎週定期払いを行っていたものの、その毎週の負債に追加料金が載せられてきた。バングラディシュ側はこの追加費用の一部を安価な石炭供給を約定した「アダニとの補足協定の失効」と説明している。この失効により、それまで契約価格より比較的安定していた電力価格が、インドネシア、豪州双方の石炭市場の平均価格を基準とする通常の電力購入契約(PPA)価格となり、さらなる電力コスト上昇をもたらしているという。

(石炭開発部 宮崎 渉)

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