米国:EIA短期エネルギー見通し: 2024年10月分(石炭)

掲載日:2024年12月13日

10月8日、米国エネルギー省エネルギー情報局(U.S. Energy Information Administration: EIA)が月例の短期エネルギー見通し(Short Term Energy Outlook: STEO)を発表した。10月公表のSTEOにおける米国の石炭に係る主な見通しの概要は以下の通りである。
 
今次STEOでは、2024年と2025年に太陽光発電が最も急成長する電力源になると予測し、2025年末には、米国の太陽光発電設備容量が米国の石炭火力発電設備容量に近づくと予想している一方で、石炭火力発電所は長期的には稼働率が高くなる傾向があるとみている。また、石炭火力由来の電力供給量が、国内の全供給量に占める割合は、2023年の17%から2024年には同16%に減少し、2025年も同水準となると予測する。(図1参照)。

 出所:U.S. EIA 「Short Term Energy Outlook October 2024」
図1 米国の電力セクター別発電容量(左)およびエネルギー源別発電量(右)


電力部門における石炭消費量は、9月には前月比で22%減となったが、10月には更に減少し、同12%減となると予測している。電力部門における石炭消費量は、通常、冷房用電力需要が縮小し、暖房用の需要が拡大するまでの間の「ショルダー・シーズン」と呼ばれる9月及び10月に減少する。当該期間は例年通り電力需要が低減すると見られることに加え、今年に関しては、天然ガス価格が依然として競争力の高い水準で推移することになると目されることから、電力部門における石炭利用の更なる低下が予測される(図2参照)。
 
11月の電力部門における石炭消費量は、前月比で3%増加し、更に12月には冬季の暖房用電力需要の高まりと、石炭価格が比較的低水準に留まる一方で、天然ガス価格が100万Btu(英国熱量)あたり3.2USドル(3.2USドル/100万Btu)に近い水準にまで上昇すると目されることから、同32%の増加を遂げると予測する。
 
石炭は、大西洋岸中部地域及び中西部地域においては、依然として主要な発電用燃料となっているが、ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせたコンバインド・サイクル方式発電の天然ガス火力発電所の熱効率が向上したことにより、電力における天然ガスの価格競争力が強まっている。だが、データセンター等のための電力需要の拡大が予想されることから、2025年には石炭生産量が減少しても、電力部門における石炭消費量は増加すると見ている。その結果として、電力事業者が保有する石炭在庫は、2024年末時点での合計1億3,000万ショートトン(130MMst)から、2025年12月には約1億ショートトン(100MMst)にまで減少すると予測している。
 
出所:U.S. EIA 「Short Term Energy Outlook October 2024」
図2 米国の電力用途における石炭使用量の変化
(単位:100万ショートトン)


 
 

(ワシントン事務所 三田部 真理)

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