カナダ:アルバータ州政府、新たな石炭規則を策定することを発表

掲載日:2024年12月27日

12月20日付アルバータ州政府報道によると、州政府は山頂採掘(Mountain Top Removal Mining:石炭を採掘するために山の頂き部分を除去し、石炭採掘後、山頂部を復旧しない採掘法)とロッキー山脈東斜面での露天掘りの石炭開発を禁止する新規則を策定する計画を発表した。

Brian Jeanエネルギー鉱物大臣は20日の声明で、州の現在の石炭政策の問題に対処し、責任ある資源開発と強力な環境保護のバランスを取った現代的なアプローチを実施するため、世界の将来の石炭採掘基準設定と、アルバータ州の水域をセレン等の採掘汚染物質から保護する目的で、新たな「石炭産業近代化イニシアティブ(CIMI)」を起草し、2025年後半に政府承認取得を目指すと述べた。

アルバータ州エネルギー規制局(AER)によると、CIMI は1976 年の石炭開発政策の趣旨に基づき2021 年の石炭政策委員会の作業を踏まえて、世界でも最も厳格な保護の下での石炭開発を許可しながら、環境保護に重点を置いた長期的な立法及び規則の枠組みを構築するものであり、「一時的な解決策や中途半端な対策を排除し、21世紀の責任ある石炭採掘の基盤を提供する」と強調した。

CIMIは水資源保護を最優先し、石炭採掘が許可される場合は、以下の要件を踏まえ最高水準の基準に従ってのみ許可される。

· 石炭採掘技術として山頂除去採掘を禁止する
· ロッキー山脈東斜面における新規露天掘りの石炭採掘は禁止される (1976 年石炭開発政策における 4カテゴリ全て。現在進行中の土地利用計画作業による更なる規制を受ける)。
· 場所に関係なく、新規石炭採掘提案は、最良の水処理方法を使用し、水路へのセレンの流入を防ぐ技術を使用する必要がある。新たな提案は、坑内掘りであるか、セレンの浸出・沈泥を防ぐために、表土の移動を最小限に抑える採掘技術(露天掘り跡に露出する炭層の機械化採炭(Highwall Mining)等)を使用する必要がある。
· 国立公園、州立公園、原野公園、自然保護区、生態保護区、州立レクリエーション地域に対する法律および 1976 年の石炭開発政策で定められた保護は継続される。

なお、原料炭炭鉱は許可される模様である。また、州政府は、州の豊富な石炭資源の開発に対する正当な補償を確保するため、新たな取り組みの下、新規炭鉱に対するロイヤルティ率も大幅に引き上げると発表した。AERは2025年初頭に、同州の採掘基準の引上げ計画と新たなロイヤルティ額について石炭業界との協議プロセスを開始する予定であるという。

アルバータ州新民主党(NDP)Naheed Nenshi党首は今回の発表は経済的利益がほとんどなく環境リスクが非常に大きいやり方であり、「クリスマス直前の巨大な石炭の塊」であると批判した。また新政策は、Grassy Mountain炭鉱など「先進的な石炭プロジェクト」とみなされるプロジェクトには影響を及ぼさないことから環境団体や地域団体から異議を唱えられている、

(石炭開発部 宮崎 渉)

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