ロシア:制裁により、ケメロヴォ州で炭鉱の閉鎖と鉱山労働者への給与未払いが進む

掲載日:2025年3月7日

3月3日付け現地紙によると、西側諸国のロシア石炭業界に対する制裁とアジアでの販売減少により、ロシア連邦の主要な産炭地であり、ロシア全体の一般炭生産の約60%、原料炭生産の約80%を占めるケメロヴォ州が深刻な危機に追い込まれている。

ケメロヴォ州Ilya Seredyuk知事は、州議会で、財政難のため、州内の8つの石炭会社が操業を停止し、数百人の鉱山労働者に数ヶ月間給与が支払われていないと語った。「我々は最も困難な状況で働いている。西側諸国の制裁により、輸出入の構造が変化している。世界市場での価格下落、制裁による石炭輸出問題、人材不足、生産コストの上昇、これらすべてが石炭産業にとって深刻な課題となっており、多くの炭鉱が損失を計上している。」

同知事によると、鉱山労働者への累積未払賃金は2億2,000万ルーブル(約3億7,000万円)にのぼると言う。Zadubrovsky Novy炭鉱、Evtinsky Novy露天掘り炭鉱、Olzherasskaya-Novaya炭鉱、Inskaya炭鉱は操業を停止した。

石炭生産者はアジアで困難に直面している。昨年、インドはロシア炭の購入を前年比37%削減し、最大の輸入国である中国も13%削減した。ケメロヴォ州の石炭総輸出量は前年比10.4%減少し、総生産量は7.3%減少し1億9,840万トンとなった。その結果、ケメロヴォ州は580億ルーブル(約970億円)の税金を徴収できなかった。ケメロヴォ州の歳入減少率はロシアでトップ5に入る。

これを受けて、ケメロヴォ州政府は2025年予算を3,080億ルーブルから2,460億ルーブルへと20%削減。教育費は650億ルーブルから570億ルーブルへと12%減、医療費は20%減、住宅・公共事業は340億ルーブルから80億ルーブルへと1/4以下への削減が決まった。ケメロヴォ州当局はまた2月に、幼稚園教諭を含む公共部門職員の削減を開始した。

専門家は、この地域には経済的に大きな危機を抱えており、2025年には問題がさらに深刻化すると言う。

Rosstatによると、昨年、ロシアの石炭会社は2社に1社が赤字決算となり、石炭産業全体の収支もマイナスとなった。

(石炭開発部 栗林 聖一)

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