米国:トランプ政権、「公正なエネルギー移行パートナーシップ(JETP)」からの離脱を決定
掲載日:2025年3月14日
3月6日付報道によると、5日、米国トランプ政権は先進国が発展途上国の脱石炭政策を進める支援枠組みである「公正なエネルギーパートナーシップ(Just Energy Transition Partnerships:JETP」から離脱すると公表した。既に米国財務省(US Department of the Treasury)は南アフリカ、インドネシア、ベトナムとのJETP協定を解消したと宣言し、同日各国の外交筋はそれを確認したという。
JETPは2021年英国グラスゴーでのCOP26で提唱され、JETP開始国としての南アフリカと国際パートナーグループとしての米国やフランス、ドイツ、英国、EU、との間で設立された枠組みである。その後翌年のCOP27を受けて、JETP開始国としてインドネシア、ベトナム、セネガルが続き、国際パートナーグループ国としてG7メンバー、デンマーク、ノルウェーが加わった。これらの先進国の資金拠出により発展途上国の脱炭素政策を進めるもので、電力部門のエネルギーと気候変動対策の目標に向けて、現在、南アフリカ、インドネシア、ベトナム、セネガルが資金提供に係る契約を締結している。
南アフリカ、インドネシア、ベトナムは総じて国内での石炭火力依存度が高いため、パリ協定に基づいた「国が決定する約束(NDC)」達成に向けて、JETP資金を通じて国内脱石炭火力を進める政策が策定、実施されていた。今回、米国が離脱する事による各国への政策的な影響が注目される。
南アフリカに対して、JETP設立時には提供資金として当初85億米ドルが約束されたが後に93億ドルに増額された。また、バイデン前大統領の任期中に合意された米国とのJETPの協定では助成金として5,600万米ドル、さらに商業融資として10億米ドルが約束されていた。なお、英国は南アフリカに対する93億ドルの支援枠組みについて、米国がなくとも支援を継続するという。南アフリカは電力の8割を石炭で発電しているが、国内で頻発する停電により石炭火力発電所の閉鎖に対する政治的な反対が高まっている。
インドネシアでは、今年1月のトランプ政権発足後に米国がパリ協定離脱を決定した際、2022年のJETP設立時には200億ドルの資金提供が約束されたが、これまでに米国から資金提供されたことはなく影響は軽微と政府高官がコメントし(2025年2月7日付:米国のパリ協定再離脱がJETPに与える影響https://coal.jogmec.go.jp/info/docs/250207_4.html参照)、その後ドイツが日本と共にJETPを主導すると報じられていた。しかし、インドネシアのJETP事務局長ポール・ブタルブタル氏は、在ジャカルタ米国大使館から米国のJETPからの離脱決定について知らされたことを確認した後、同局長は、米国の撤退によって資金提供額は変わることはないものの、インドネシアの移行のための研究と助成金の資金提供に影響を与えるだろうと指摘している。インドネシアは依然として発電に石炭を多く使用しており、石炭火力発電による段階的廃止に向けた資金は大幅に削減されることになる。
ベトナムは、2022年にJETPを設立し、向こう3~5年(2025~2027年まで)にわたり官民から155億米ドルの資金を調達することを目指していた。また、ベトナムは2月19日に石炭からクリーンエネルギーへ移行する計画に署名し(2025年2月28日付:ファン・ミン・チン首相、2050年までに排出量ゼロ達成のため、石炭からクリーンエネルギーへ移行する計画を発表https://coal.jogmec.go.jp/info/docs/250228_4.html参照)、翌日ベトナム商工省(Ministry of Industry and Trade of the Socialist republic of Vietnam:MOIT)が石炭火力にJETPに係る2025年運営方針を公表したばかりとなっている。
JETPは2021年英国グラスゴーでのCOP26で提唱され、JETP開始国としての南アフリカと国際パートナーグループとしての米国やフランス、ドイツ、英国、EU、との間で設立された枠組みである。その後翌年のCOP27を受けて、JETP開始国としてインドネシア、ベトナム、セネガルが続き、国際パートナーグループ国としてG7メンバー、デンマーク、ノルウェーが加わった。これらの先進国の資金拠出により発展途上国の脱炭素政策を進めるもので、電力部門のエネルギーと気候変動対策の目標に向けて、現在、南アフリカ、インドネシア、ベトナム、セネガルが資金提供に係る契約を締結している。
南アフリカ、インドネシア、ベトナムは総じて国内での石炭火力依存度が高いため、パリ協定に基づいた「国が決定する約束(NDC)」達成に向けて、JETP資金を通じて国内脱石炭火力を進める政策が策定、実施されていた。今回、米国が離脱する事による各国への政策的な影響が注目される。
南アフリカに対して、JETP設立時には提供資金として当初85億米ドルが約束されたが後に93億ドルに増額された。また、バイデン前大統領の任期中に合意された米国とのJETPの協定では助成金として5,600万米ドル、さらに商業融資として10億米ドルが約束されていた。なお、英国は南アフリカに対する93億ドルの支援枠組みについて、米国がなくとも支援を継続するという。南アフリカは電力の8割を石炭で発電しているが、国内で頻発する停電により石炭火力発電所の閉鎖に対する政治的な反対が高まっている。
インドネシアでは、今年1月のトランプ政権発足後に米国がパリ協定離脱を決定した際、2022年のJETP設立時には200億ドルの資金提供が約束されたが、これまでに米国から資金提供されたことはなく影響は軽微と政府高官がコメントし(2025年2月7日付:米国のパリ協定再離脱がJETPに与える影響https://coal.jogmec.go.jp/info/docs/250207_4.html参照)、その後ドイツが日本と共にJETPを主導すると報じられていた。しかし、インドネシアのJETP事務局長ポール・ブタルブタル氏は、在ジャカルタ米国大使館から米国のJETPからの離脱決定について知らされたことを確認した後、同局長は、米国の撤退によって資金提供額は変わることはないものの、インドネシアの移行のための研究と助成金の資金提供に影響を与えるだろうと指摘している。インドネシアは依然として発電に石炭を多く使用しており、石炭火力発電による段階的廃止に向けた資金は大幅に削減されることになる。
ベトナムは、2022年にJETPを設立し、向こう3~5年(2025~2027年まで)にわたり官民から155億米ドルの資金を調達することを目指していた。また、ベトナムは2月19日に石炭からクリーンエネルギーへ移行する計画に署名し(2025年2月28日付:ファン・ミン・チン首相、2050年までに排出量ゼロ達成のため、石炭からクリーンエネルギーへ移行する計画を発表https://coal.jogmec.go.jp/info/docs/250228_4.html参照)、翌日ベトナム商工省(Ministry of Industry and Trade of the Socialist republic of Vietnam:MOIT)が石炭火力にJETPに係る2025年運営方針を公表したばかりとなっている。
(石炭開発部 福水 理佳)
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