米国:トランプ大統領、石炭産業を復活させる大統領令を発令
掲載日:2025年4月18日
ドナルド・トランプ米大統領は4月8日、衰退する米国の石炭産業の復活を目的とした大統領令に署名した。この大統領令には、大統領令14241号(米国の鉱物生産を増やすための緊急措置)の改正も含まれる。これにより、国内の増大する電力需要を満たすために、石炭採掘に対する規制が緩和され、発電所の廃止が延期されると予想される。
本大統領令は、米国の石炭生産を阻害する連邦規制における障壁を排除し、石炭生産、石炭輸出の増加、石炭火力発電を支援するものである。米国政府は国家エネルギー安全保障の強化のために、2025年3月20日の大統領令14241号第2項で定義されている「鉱物」として石炭を指定し、同命令同号第6節(民間及び公的資本投資の加速)において、石炭は戦略資源として生産・促進されることになる。
政策・政府措置の修正または撤回の検討による、石炭ファイナンスへの緩和
今回の大統領令では、エネルギー源としての米国石炭支援として、石炭採掘に対する障壁を撤廃するために、関連する行政部門や機関における長官は、本大統領令の発令日から60日以内に連邦政府の所有地における石炭資源とその埋蔵量を特定し、石炭採掘における障壁を明らかにした上で、最終的に石炭採掘が可能となる政策提案が盛り込まれた報告書を大統領に提出しなければならないとしている。
また、本大統領令発令日から30日以内に、石炭生産および石炭火力発電から脱却する目的の指針、規制、プログラムといったあらゆる政策を特定し、同60日以内にこの特定された政策および措置を修正または撤回することを検討することが求められる。
さらに、国内外で融資、融資保証、補助金、株式投資を行う権限、またはオフテイク契約を締結する権限を持つ機関においては、石炭生産や石炭火力発電への投資を阻止しようとする、または実際に阻止する政策や規制を撤回するための措置を講じなければならないとしている。
この他にも石炭採掘プロジェクトおよび発電プロジェクトへの資金調達を関連機関が妨げることがないようにするものとし、法令で規定されている場合を除き、該当機関の長の裁量により石炭使用に対する不遇措置は直ちに撤廃されるものとするとあり、これまでの石炭に係るファイナンス対応への潮流が変わり、石炭事業への復活のための措置が進められようとしている。
石炭リースの拡大による石炭生産の促進
大統領令では、石炭資源を有する公有地の土地利用として、石炭リースを迅速化することが挙げられている。連邦官報に「ジュエル長官の石炭リース一時停止措置の維持による環境への潜在的影響を分析する環境影響評価書」を終了する通知の掲載を命じることにより、石炭リースの一時停止措置が終了となる。公有地から石炭を採掘するために連邦政府に支払う金額を一時的に引き下げるよう、石炭生産者が求める申請を審査するプロセスを合理化し迅速化することで、炭鉱操業継続の支援となる。米国内務省の公表によると、この石炭リースについては過去9年間の間、連邦政府による石炭リースの一時停止に関連する措置の状況は、政権が変わるたびに本命令が撤回そして履され続け不透明のままだったとし、オバマ大統領時のサリー・ジュエル内務省長官が命じた、この一時停止命令に関連する連邦石炭リースプログラムの環境影響評価書やその他の環境分析を実施しないという通知を掲載し、不透明だった本件を確実に終了させるとしている。
米国内務省公表によると、石炭リースをさらに支援するため、米国土地管理局(Bureau of Land Management:BLM)は、ワイオミング州バッファローとモンタナ州マイルズシティの資源管理計画の改訂を進めている。本計画を改訂することで、ワイオミング州のパウダーリバー流域といった生産量の多い地域で更に開発できるようになる。現在の資源管理計画では、将来的な石炭リースについて厳しく制限されており、連邦による新規の石炭プロジェクトの組成が非常に困難になっているという。
さらに、石炭産業を復活させる動向として、米国内務省では3月13日に、モンタナ州ビッグホーン郡にあるスプリングクリーク鉱山について、米国地表鉱山局(Office of Surface Mining Reclamation and Enforcement)による連邦採掘計画の修正を承認したと発表した。この決定により、同鉱山は採掘拡張となり、操業寿命は16年延長され、約3,990万トンの石炭の生産が可能となった。 スプリングクリーク炭鉱は、アリゾナ州、ミシガン州、ミネソタ州、ワシントン州に国内供給しているほか、日本と韓国にも石炭を供給している。
現地メディアによると、トランプ大統領は政治の浮き沈みによって石炭採掘事業が中止されることがないよう、今後何年にもわたって石炭採掘事業を保護するとし、モンタナ州のスプリングクリーク鉱山の拡張を例に挙げ、ワイオミング州、ユタ州、アラバマ州、ノースダコタ州、ウェストバージニア州でも今後さらに拡張が行われるだろうと述べたという。
米国の石炭輸出の支援
大統領令では、米国産石炭の国際引取協定を促進するために、石炭および石炭技術の輸出機会を促進および特定し、必要とするあらゆる適切な措置を講じなければならないとして、米国の商務省長官、国務省長官、エネルギー省長官、通商省代表部、国家安全保障担当大統領補佐官等の関連機関の長官との協議を要請している。
米国エネルギー省エネルギー情報局(U.S. Energy Information Administration:EIA)による2025年3月公表の見通しによると、2025年における米国産石炭輸出量を、9,700万ショートトン(97MMst)と予測し、2026年の石炭輸出量は前年比で若干増加し、9,900万ショートトン(99 MMst)となると予測しているが、今後は更に石炭輸出量の増加が見込まれることとなる。
この他にも本大統領令では、鉄鋼生産に使用される石炭が、2020年エネルギー法(Energy Act of 2020)における重要鉱物としての定義を満たしている場合は、エネルギー省重要鉱物リストへの掲載措置を行い、同様に、鉄鋼生産に使用される原料炭が同法における重要鉱物としての定義を満たしている場合は、内務省重要鉱物リストへの掲載措置を行うとしている。
本大統領令は、米国の石炭生産を阻害する連邦規制における障壁を排除し、石炭生産、石炭輸出の増加、石炭火力発電を支援するものである。米国政府は国家エネルギー安全保障の強化のために、2025年3月20日の大統領令14241号第2項で定義されている「鉱物」として石炭を指定し、同命令同号第6節(民間及び公的資本投資の加速)において、石炭は戦略資源として生産・促進されることになる。
政策・政府措置の修正または撤回の検討による、石炭ファイナンスへの緩和
今回の大統領令では、エネルギー源としての米国石炭支援として、石炭採掘に対する障壁を撤廃するために、関連する行政部門や機関における長官は、本大統領令の発令日から60日以内に連邦政府の所有地における石炭資源とその埋蔵量を特定し、石炭採掘における障壁を明らかにした上で、最終的に石炭採掘が可能となる政策提案が盛り込まれた報告書を大統領に提出しなければならないとしている。
また、本大統領令発令日から30日以内に、石炭生産および石炭火力発電から脱却する目的の指針、規制、プログラムといったあらゆる政策を特定し、同60日以内にこの特定された政策および措置を修正または撤回することを検討することが求められる。
さらに、国内外で融資、融資保証、補助金、株式投資を行う権限、またはオフテイク契約を締結する権限を持つ機関においては、石炭生産や石炭火力発電への投資を阻止しようとする、または実際に阻止する政策や規制を撤回するための措置を講じなければならないとしている。
この他にも石炭採掘プロジェクトおよび発電プロジェクトへの資金調達を関連機関が妨げることがないようにするものとし、法令で規定されている場合を除き、該当機関の長の裁量により石炭使用に対する不遇措置は直ちに撤廃されるものとするとあり、これまでの石炭に係るファイナンス対応への潮流が変わり、石炭事業への復活のための措置が進められようとしている。
石炭リースの拡大による石炭生産の促進
大統領令では、石炭資源を有する公有地の土地利用として、石炭リースを迅速化することが挙げられている。連邦官報に「ジュエル長官の石炭リース一時停止措置の維持による環境への潜在的影響を分析する環境影響評価書」を終了する通知の掲載を命じることにより、石炭リースの一時停止措置が終了となる。公有地から石炭を採掘するために連邦政府に支払う金額を一時的に引き下げるよう、石炭生産者が求める申請を審査するプロセスを合理化し迅速化することで、炭鉱操業継続の支援となる。米国内務省の公表によると、この石炭リースについては過去9年間の間、連邦政府による石炭リースの一時停止に関連する措置の状況は、政権が変わるたびに本命令が撤回そして履され続け不透明のままだったとし、オバマ大統領時のサリー・ジュエル内務省長官が命じた、この一時停止命令に関連する連邦石炭リースプログラムの環境影響評価書やその他の環境分析を実施しないという通知を掲載し、不透明だった本件を確実に終了させるとしている。
米国内務省公表によると、石炭リースをさらに支援するため、米国土地管理局(Bureau of Land Management:BLM)は、ワイオミング州バッファローとモンタナ州マイルズシティの資源管理計画の改訂を進めている。本計画を改訂することで、ワイオミング州のパウダーリバー流域といった生産量の多い地域で更に開発できるようになる。現在の資源管理計画では、将来的な石炭リースについて厳しく制限されており、連邦による新規の石炭プロジェクトの組成が非常に困難になっているという。
さらに、石炭産業を復活させる動向として、米国内務省では3月13日に、モンタナ州ビッグホーン郡にあるスプリングクリーク鉱山について、米国地表鉱山局(Office of Surface Mining Reclamation and Enforcement)による連邦採掘計画の修正を承認したと発表した。この決定により、同鉱山は採掘拡張となり、操業寿命は16年延長され、約3,990万トンの石炭の生産が可能となった。 スプリングクリーク炭鉱は、アリゾナ州、ミシガン州、ミネソタ州、ワシントン州に国内供給しているほか、日本と韓国にも石炭を供給している。
現地メディアによると、トランプ大統領は政治の浮き沈みによって石炭採掘事業が中止されることがないよう、今後何年にもわたって石炭採掘事業を保護するとし、モンタナ州のスプリングクリーク鉱山の拡張を例に挙げ、ワイオミング州、ユタ州、アラバマ州、ノースダコタ州、ウェストバージニア州でも今後さらに拡張が行われるだろうと述べたという。
米国の石炭輸出の支援
大統領令では、米国産石炭の国際引取協定を促進するために、石炭および石炭技術の輸出機会を促進および特定し、必要とするあらゆる適切な措置を講じなければならないとして、米国の商務省長官、国務省長官、エネルギー省長官、通商省代表部、国家安全保障担当大統領補佐官等の関連機関の長官との協議を要請している。
米国エネルギー省エネルギー情報局(U.S. Energy Information Administration:EIA)による2025年3月公表の見通しによると、2025年における米国産石炭輸出量を、9,700万ショートトン(97MMst)と予測し、2026年の石炭輸出量は前年比で若干増加し、9,900万ショートトン(99 MMst)となると予測しているが、今後は更に石炭輸出量の増加が見込まれることとなる。
この他にも本大統領令では、鉄鋼生産に使用される石炭が、2020年エネルギー法(Energy Act of 2020)における重要鉱物としての定義を満たしている場合は、エネルギー省重要鉱物リストへの掲載措置を行い、同様に、鉄鋼生産に使用される原料炭が同法における重要鉱物としての定義を満たしている場合は、内務省重要鉱物リストへの掲載措置を行うとしている。
(石炭開発部 福水 理佳)
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