インドネシア:PT Bukit Asam 社のDME事業が停滞、中国企業がAir Product and Chemical社(本社:米国)に代わる投資家になる可能性

掲載日:2025年5月16日

2025年5月7日付地元報道によると、インドネシア政府のバフリルエネルギー・鉱物資源大臣は、PT Bukit Asam 社 (PTBA)がDME事業に関して政府の政策を実現できない場合、PTBAの鉱業許可地域(WIUP)の一部を剥奪すると、DME事業の進捗が遅れていることへの不満を表明した。

これに対して、インドネシア石炭鉱業協会(APBI)は、DME事業における経済的問題を提起した。DME事業はDME製造施設の建設・運営者の役割を担っていたAir Product and Chemical社(APCI(本社:米国) が撤退したことにより、頓挫したように見られていたが、PT Bukit Asam 社 (PTBA)が、中国企業ECEC社(East China Engineering Science and Technology Co. Ltd.) がAPCIに代わる投資家になる可能性があることを表明したことで再び投資家の注目を集めることとなった。しかしながら、経済面ではまだ多くの課題があり、PTBAの計算によると、DMEの製造コストは、エネルギー鉱物資源省(ESDM)が設定した販売価格且つ輸入LPGよりもはるかに割高であるとしている。DMEの基準価格がトン当たりUS$911である場合、LPG補助金とDMEのコストを比較した計算に基づくと、DMEの補助金はトン当たり710米ドル、年間123兆ルピアに達する可能性があるこの数字は、DME換算で1トン当たり474米ドル、年間82兆ルピアのLPGに対する現在の補助金額よりも大きい。つまり、年間41兆ルピアの補助金増額のリスクがある。LPG補助金価格は現在3kgあたり22,727ルピア、1トンあたり約474米ドルに設定されており、年間約1,078万トン、年間82兆ルピアに相当すると想定されている。

一方、補助金付きのDMEについては、3kg当たりの価格は34,069ルピア、1トン当たりUS$710に相当し年間1,078万トン、年間123兆ルピアに相当するとされている。さらにDMEへの下流部門が技術的な課題に直面しており、配電線やDMEと互換性のある家庭用コンロなどの変換インフラ整備が必要であることが障害となっているとしている。これらの投資コストは鉱山開発の価値を上回り、資本コストの高さが投資家誘致の課題である。さらに、DMEプロジェクトの実施には最先端の技術が必要でありインドネシア単独での開発は不可能と見られている。

DME事業自体は、年間約600万トンの石炭を利用し、年間約140万トンのDME生産を目標に設計されている。PTBAは下流事業を積極的に実行する用意があり、インドネシアのDME事業に注目している投資家も多数いるという。DME事業は、輸入LPGに依存からの脱却を目指し、国のエネルギー安全保障をサポートするための戦略的ステップであるため、インドネシア政府の政策的支援が必須としている。

(ジャカルタ事務所)

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