米国:EIA短期エネルギー見通し: 2025年5月分(石炭)
掲載日:2025年5月23日
5月6日、米国エネルギー省エネルギー情報局(U.S. Energy Information Administration: EIA)が月例の短期エネルギー見通し(Short Term Energy Outlook: STEO)を発表した。5月公表のSTEOにおける米国の石炭に係る主な見通しの概要は以下の通りである。天然ガス価格の上昇を受け、石炭火力発電所の稼働が増加すると目されることから、今次STEOでは、2025年の米国の石炭火力発電由来の発電量は、前年比で6%となる410億キロワット時(kWh)増加すると予測している。
4月、環境保護庁(Environmental Protection Agency:EPA)は、米国内の複数の石炭火力発電所に対し、厳格な排出規制の適用を暫定的に免除する措置を発表した。同規制緩和及び目下の天然ガス価格の上昇により、短期的には石炭火力発電由来の発電量が増加することになると考えられる。石炭火力発電事業者は、2025年までに米国の発電容量全体の約5%に相当する当該施設の稼働を停止することを計画しているが、その大部分は年末までは稼働を継続する模様である。同月発出された大統領令における、石炭産業支援を目的とした文言は、今後の石炭火力発電所の閉鎖計画に影響を及ぼす可能性があり、本件STEOにおける予測の不確実性を高めている。
今次STEOでは、2025年の米国における石炭生産量合計を先月STEOから上方修正し、5億600万ショートトン(506 MMst)となると予測した。これは、主に電力需要の増加を受け、1月及び2月の石炭消費量が前年同期間比で18%増となったことを反映したものである。2025年第一四半期の消費量は増加したものの、当該期間中の生産量は前年同期間から変化しておらず、石炭火力発電所は増加した需要を備蓄から賄っていた。米国の電力部門における石炭備蓄量は、2024年12月には1億2,800万ショートトン(128 MMst)であったが、2025年2月には1億700万(107 MMst)に減少し、その後、需要が落ち着き始める3月に、1億1,700万ショートトン(117MMst)にまで回復した。天然ガス価格はここ2ヶ月で低下したが、2025年及び2026年を通じて2024年の水準を上回る価格帯で推移すると予測しており、その場合、石炭火力発電の稼働が後押しされることになると考えられる。
今次STEOでは、米国における石炭生産量は、2025年第二四半期から消費量の拡大を追う形で増加すると見ており、2025年全体の消費量は前年比で4%増、2025年第二四半期については前年同期間比で9%増となると予測する。2025年後半にかけ、国内の石炭火力発電所の閉鎖が進むと目されることから、今次STEOでは、2026年の石炭消費量合計は前年比で8%減少し、石炭生産量合計は6%減少の4億7,500万ショートトン(475 MMst)となると予測する(図1参照)。また、電力部門における石炭備蓄の使用は来年も継続し、同備蓄量は2025年末には1億1600万ショートトン(116 MMst)、2026年末には1億1,200万ショートトン(112 MMst)となると予測している。

出所:U.S. EIA 「Short Term Energy Outlook May 2025」
図1 2024年から2026年における米国の石炭生産量(単位:100万ショートトン)
4月、環境保護庁(Environmental Protection Agency:EPA)は、米国内の複数の石炭火力発電所に対し、厳格な排出規制の適用を暫定的に免除する措置を発表した。同規制緩和及び目下の天然ガス価格の上昇により、短期的には石炭火力発電由来の発電量が増加することになると考えられる。石炭火力発電事業者は、2025年までに米国の発電容量全体の約5%に相当する当該施設の稼働を停止することを計画しているが、その大部分は年末までは稼働を継続する模様である。同月発出された大統領令における、石炭産業支援を目的とした文言は、今後の石炭火力発電所の閉鎖計画に影響を及ぼす可能性があり、本件STEOにおける予測の不確実性を高めている。
今次STEOでは、2025年の米国における石炭生産量合計を先月STEOから上方修正し、5億600万ショートトン(506 MMst)となると予測した。これは、主に電力需要の増加を受け、1月及び2月の石炭消費量が前年同期間比で18%増となったことを反映したものである。2025年第一四半期の消費量は増加したものの、当該期間中の生産量は前年同期間から変化しておらず、石炭火力発電所は増加した需要を備蓄から賄っていた。米国の電力部門における石炭備蓄量は、2024年12月には1億2,800万ショートトン(128 MMst)であったが、2025年2月には1億700万(107 MMst)に減少し、その後、需要が落ち着き始める3月に、1億1,700万ショートトン(117MMst)にまで回復した。天然ガス価格はここ2ヶ月で低下したが、2025年及び2026年を通じて2024年の水準を上回る価格帯で推移すると予測しており、その場合、石炭火力発電の稼働が後押しされることになると考えられる。
今次STEOでは、米国における石炭生産量は、2025年第二四半期から消費量の拡大を追う形で増加すると見ており、2025年全体の消費量は前年比で4%増、2025年第二四半期については前年同期間比で9%増となると予測する。2025年後半にかけ、国内の石炭火力発電所の閉鎖が進むと目されることから、今次STEOでは、2026年の石炭消費量合計は前年比で8%減少し、石炭生産量合計は6%減少の4億7,500万ショートトン(475 MMst)となると予測する(図1参照)。また、電力部門における石炭備蓄の使用は来年も継続し、同備蓄量は2025年末には1億1600万ショートトン(116 MMst)、2026年末には1億1,200万ショートトン(112 MMst)となると予測している。

出所:U.S. EIA 「Short Term Energy Outlook May 2025」
図1 2024年から2026年における米国の石炭生産量(単位:100万ショートトン)
(ワシントン事務所 三田部 真理)
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