ロシア:ロシア政府、苦境にあえぐ石炭産業の支援策を発表

掲載日:2025年6月6日

5月30日付けの地元メディアによると、ロシア政府は5月30日、苦境にあえぐ石炭産業の支援策で合意に至ったと発表した。支援内容には、税金の支払いの猶予、経営陣への配当金やボーナスの制限、石炭製品の長距離輸出時における物流費の一部補助が含まれる。また、すべての石炭企業に対して、鉱物採取税(MET)や保険料の支払いを12月1日まで猶予する措置が取られ、必要があれば小委員会が支払い期限のさらなる延長を決定する可能性がある。

さらなる措置として、シベリアの石炭企業は北西・南方向に輸出する際に12.8%の補助金を受け取る。エネルギー省はそれに対応するリストを作成し、経済分野において企業に財政支援を行う小委員会の承認を受けることになる。

また、深刻な債務を抱える企業は債務を再編できる可能性がある。再編計画を策定する際にはロシア中央銀行の立場が考慮されることになる。

ミシュスチン首相はかつて、石炭産業が近年大きな課題に直面していると語っていた。特に、あらゆる種類の石炭の国際価格の暴落を指摘していた。「残念ながら、状況は今年も引き続き悪化している。最初の4か月で輸出価格はおよそ25%下落した。企業の大きな負債が事態を複雑化させている。現在の経営状況や産業の安全を維持し、雇用・環境を守るには大規模な支援が必要だ」と首相は述べた。

ロシアの石炭企業は2023年には3,747億ルーブル(約47.6億米ドル)の純利益を記録していたが、2024年は逆に1,126億ルーブル(約14.3億米ドル)の純損失となった。連邦国家統計局によると、2024年1~2月期の203億ルーブル(約2.58億米ドル)の利益に対し、2025年1~2月期はすでに199億ルーブル(約2.53億米ドル)の損失を計上している。

国際エネルギー機関(IEA)によると、同国の石炭輸出はインフラの混乱や制裁の圧力を受けて、昨年6%落ち込んだ。政府書簡において、ノヴァク副首相は先月、石炭分野の経営状況が引き続き悪化し、30社(雇用規模1万5,000人、年間生産能力は3,000万トン規模)に破綻リスクがあるとプーチン大統領に報告している。

(石炭開発部 佐藤 譲)

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