欧州:ルーマニア、EUに対し2026年に石炭火力発電所を閉鎖しないと表明
掲載日:2025年6月13日
6月4日付の現地メディアによると、ルーマニアのセバスティアン・ブルドゥヤ・エネルギー大臣は、6月3日から4日にかけてベルギーで開催された、欧州の電力部門のイベント「Eurelectric Power Summit 2025」において、欧州委員会エネルギー担当委員のダン・ヨルゲンセン委員と会談し、2026年1月1日に予定されている1,755メガワットの石炭火力発電所の閉鎖は、確固たる代替案がない限り実現不可能であるというルーマニアの確固たる立場を改めて表明した。
2021年にルーマニア・エネルギー省が欧州委員会(European Commission:EC)との間で交わした、新型コロナウイルス危機からの復興及び支援基金となり、クリーンエネルギーへの移行強化を目的とする、国家復興・強靭化計画(National Recovery and Resilience Plan:PNRR)の中の、2032年末までに4.59ギガワットの石炭火力発電所を段階的に停止することについて、同省はECとのPNRRの再交渉および石炭火力発電所の閉鎖期限の延期を主張している。
この背景として、当初、石炭火力発電所に代わるものとして、ルーマニアでは2025年末までに1.3ギガワットのガス火力発電所の新設に取組む予定であったが(2021年10月7日付:ルーマニア2032年までに石炭火力発電から撤退https://coal.jogmec.go.jp/info/docs/211007_26.html参照)、ガスタービンの価格高騰等により稼働開始が難航しているという。また、同省大臣はルーマニア国内の石炭火力発電所の閉鎖をしても、セルビア、ブルガリアといった国外からのさらなるエネルギー輸入に頼らざるを得なくなり、それらエネルギーも石炭をベースとしており非常に高価であることから、実質的には変わらないとし、新規発電設備がなければ特に冬季においてルーマニアの国家エネルギーシステムが脆弱となり、エネルギー安全保障においてこれを受け入れることはできないと強調している。
ルーマニア政府は2022年6月、2030年までに石炭火力発電を段階的に廃止する緊急法案を公布し、2021年9月に策定されたPNRRに盛り込まれていた2032年までの石炭火力発電段階的廃止期限よりも2年早く前倒しした。この新法には、石炭火力発電からの撤退に伴い解雇される炭鉱労働者1人につき、最低出力3~5キロワットの太陽光発電システムの設置費用を補助する規定が含まれている。その後2024年10月、ルーマニアは改訂版国家エネルギー・気候計画(National Energy and Climate Plan:NECP)を発表し、この計画では石炭火力発電の段階的廃止期限を2032年に戻し、同時に2030年の太陽光発電容量目標を5ギガワットから8.3ギガワットに引き上げている。
国際エネルギー機関(International Energy Agency:IEA)によると、2022年のルーマニアの電源構成における石炭のシェアは全体の18.7%となり、水力の25.6%と原子力19.8%に次いで、第3位の電源である。なお、ルーマニアはEUの中でも天然ガスや石油資源の豊富な国であり、天然ガスの生産量は2024年にオランダを抜き第1位となった。ルーマニアは歴史的に近隣諸国への電力の純輸出国であったが、電力輸出入の相互接続容量が限られていることや、石炭火力発電所の段階的廃止を進める一方で、新規発電や電力貯蔵への投資が限られていることもあり、電力需要増加に伴い、最近では電力の純輸入国になっている。
2021年にルーマニア・エネルギー省が欧州委員会(European Commission:EC)との間で交わした、新型コロナウイルス危機からの復興及び支援基金となり、クリーンエネルギーへの移行強化を目的とする、国家復興・強靭化計画(National Recovery and Resilience Plan:PNRR)の中の、2032年末までに4.59ギガワットの石炭火力発電所を段階的に停止することについて、同省はECとのPNRRの再交渉および石炭火力発電所の閉鎖期限の延期を主張している。
この背景として、当初、石炭火力発電所に代わるものとして、ルーマニアでは2025年末までに1.3ギガワットのガス火力発電所の新設に取組む予定であったが(2021年10月7日付:ルーマニア2032年までに石炭火力発電から撤退https://coal.jogmec.go.jp/info/docs/211007_26.html参照)、ガスタービンの価格高騰等により稼働開始が難航しているという。また、同省大臣はルーマニア国内の石炭火力発電所の閉鎖をしても、セルビア、ブルガリアといった国外からのさらなるエネルギー輸入に頼らざるを得なくなり、それらエネルギーも石炭をベースとしており非常に高価であることから、実質的には変わらないとし、新規発電設備がなければ特に冬季においてルーマニアの国家エネルギーシステムが脆弱となり、エネルギー安全保障においてこれを受け入れることはできないと強調している。
ルーマニア政府は2022年6月、2030年までに石炭火力発電を段階的に廃止する緊急法案を公布し、2021年9月に策定されたPNRRに盛り込まれていた2032年までの石炭火力発電段階的廃止期限よりも2年早く前倒しした。この新法には、石炭火力発電からの撤退に伴い解雇される炭鉱労働者1人につき、最低出力3~5キロワットの太陽光発電システムの設置費用を補助する規定が含まれている。その後2024年10月、ルーマニアは改訂版国家エネルギー・気候計画(National Energy and Climate Plan:NECP)を発表し、この計画では石炭火力発電の段階的廃止期限を2032年に戻し、同時に2030年の太陽光発電容量目標を5ギガワットから8.3ギガワットに引き上げている。
国際エネルギー機関(International Energy Agency:IEA)によると、2022年のルーマニアの電源構成における石炭のシェアは全体の18.7%となり、水力の25.6%と原子力19.8%に次いで、第3位の電源である。なお、ルーマニアはEUの中でも天然ガスや石油資源の豊富な国であり、天然ガスの生産量は2024年にオランダを抜き第1位となった。ルーマニアは歴史的に近隣諸国への電力の純輸出国であったが、電力輸出入の相互接続容量が限られていることや、石炭火力発電所の段階的廃止を進める一方で、新規発電や電力貯蔵への投資が限られていることもあり、電力需要増加に伴い、最近では電力の純輸入国になっている。
(石炭開発部 福水 理佳)
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