米国:米労働省、米国の鉱山安全事務所の閉鎖計画を撤回

掲載日:2025年6月27日

現地メディアによると、5月28日、米労働省(U.S. Department of Labor:DOL)は、鉱山の安全に関する法律の施行機関である、鉱山安全衛生局(Mine Safety and Health Administration: MSHA)の34か所の事務所の閉鎖措置の撤回を発表した。労務省は、MSHAの検査官が、鉱山労働者の事故死や病気、怪我を未然に防ぎ、現場の安全性の確保と衛生管理を行うという重要な任務の遂行するために必要な要員を十分に確保できるようにするため、米一般調達局(General Services Administration)と密接に連携してきたとする声明を発表した。

MSHAは1978年に労働省の一部局として議会によって設立された機関である。その設立理由の一つとして、時には多大な費用を要する炭鉱労働者の安全や衛生管理に関わる措置の施行を、石炭会社に義務付けることが困難であると判断されたことが挙げられる。MSHAには、国内の全ての地下坑道を四半期に一度、地上の坑道ついては半年に一度、査察することが義務付けられている。過去40年間で炭鉱における死亡事故は、主に国内の石炭生産活動が大幅に縮小されたことにより激減しているものの、MSHAは石炭だけでなく、金属及び非金属鉱山の監督も担っており、当該業務は既に人手不足の状態にある。

ケンタッキー州に拠点を置く非営利法律事務所である、アパラチア市民法律センター(Appalachian Citizens’ Law Center: ACLC)の公開情報によると、本閉鎖対象となっていたMSHAの事務所が2024年の年始から2025年の2月までの間に実施した鉱山の安全及び衛生に関する査察は約1万7,000件であった。さらにACLCによると、MSHAの職員は過去10年間で27%削減されており、その内の50%は炭鉱の監督及び査察に携わっていた人員であったという。尚、閉鎖予定34か所の内、7か所の所在地は国内有数の石炭生産州となるケンタッキー州であった。

MSHAの事務所34所の閉鎖については、今年初旬、トランプ大統領が創立し、テスラ社CEOのイーロン・マスク氏によって運営されている政府機関である政府効率化省(Department of Government Efficiency: DOGE)が連邦政府支出の削減のため決定したことによるものである。このMSHAの事務所の閉鎖は、連邦政府支出の1,800万ドルの削減につながると目されていたが、本撤回はマスク氏がトランプ大統領の上級顧問としての職を退くことを発表した同日に発表された。

(ワシントン事務所 三田部 真理)

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