欧州:アイルランド、国内最後の石炭火力発電所を閉鎖

掲載日:2025年6月27日

現地メディアによると、6月20日、アイルランドの国営電力会社であるESB(Electricity Supply Board)は、40年以上にわたって稼働してきた国内最後の石炭火力発電所となるマネーポイント石炭火力発電所を正式に閉鎖したと発表した。ESBは石炭火力発電を計画より早く終了させたことで、この閉鎖をネット・ゼロ・カーボン・エミッション戦略における重要なマイルストーンとしている。

同国クレア県にあるマネーポイント石炭火力発電所は今後4年間、アイルランドの国営送電事業者であるEirGridの指示のもとで、緊急時の電力不足の場合にのみ稼働させるための石油火力発電所として待機することになる。これは、2023年にESBとEirGridが締結した協定に基づくもので、2025~2029年の期間中は同発電所を石炭火力発電と比較し二酸化炭素排出量が少ないとされる石油火力発電として利用可能とするという内容となっている。

マネーポイント発電所自体はアイルランド最大のエネルギー発電所のひとつであり、現在、再生可能エネルギーのハブ発電所へと転換する取り組みを継続している。同発電所は1980年代に当時の石油危機を緩和すべく建設されたもので、最盛期には化石燃料により国のエネルギー需要の約25%を賄っていた。しかし近年の石炭需要の減少に伴い、ESBはこの火力発電所を徐々に再生可能エネルギーに転換し、拠点とする方針をとっている。

2017年、マネーポイント発電所に17メガワットの陸上風力発電所が建設され、化石燃料発電からの脱却プロセスを開始した。2021年にはESBは同地を国内最大級の再生可能エネルギーハブ発電所に変貌させるプロジェクトとして「Green Atlantic@Moneypoint」を発表し、このプロジェクトの第1段階として、再生可能エネルギー向けのゼロカーボン技術となるアイルランド初の同期調相機に対して5,000万ユーロの投資を行った。

同期調相機とは、再生可能エネルギーの増加に伴い電力消費量と発電量のバランスが崩れた際に、電力系統の調整を行い安定性を保つ。この送電システムの安定性については、再生可能エネルギーが大量に供給された場合でも電力供給を維持するために重要であり、今年4月に発生したスペインでの大規模停電の原因として多くの人が指摘している問題でもあると伝えている。

(石炭開発部 福水 理佳)

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