ロシア:ロシア最大の石炭産地ケメロヴォ州で炭鉱が相次ぎ操業停止、数百人が給与未払いのまま放置

掲載日:2025年7月4日

6月30日付けの地元メディアによると、ロシア・シベリアのケメロヴォ州に位置する最大級の石炭鉱山「Spiridonovskaya鉱山」が、深刻な財政難により2025年6月初旬から操業を停止した。従業員約900人のうち多数が給与や手当の未払い状態に置かれており、州政府によるとその総額は約9,000万ルーブル(約117万米ドル)に達している。鉱山の経営陣は、5月下旬に投資資金の不足を理由に760人の従業員を解雇すると発表し、その後6月末までにさらに約120人が自主退職した。現在も約130人の作業員が現場に残り、鉱山の重要インフラの維持業務に従事している。同鉱山では操業停止前の2025年前半に約21万4,000トンの石炭を生産していた。

同鉱山を運営する企業は2023年に約15億ルーブル(約1,950万米ドル)の売上高を記録したが、純損失は約4億2,200万ルーブル(約550万米ドル)に上り、2024年には売上高が22億ルーブル(約2,860万米ドル)へと増加した一方で、損失は4倍の18億ルーブル(約2,340万米ドル)に膨らんだ。

ケメロヴォ州の第一副知事Andrei Panov氏は、同鉱山の従業員が1カ月以上にわたり給与を受け取っていないことを認めたうえで、州内に存在する151の石炭関連企業のうち20社が破綻の危機にあると指摘。「現在のような危機の時代において、石炭採掘事業者は生き残りのためにコスト削減や人員削減、無給休暇といった厳しい手段を取らざるを得ない」と述べた。

今回の操業停止は、ロシア石炭業界全体で進行する構造的危機の一例に過ぎない。クズバス地域では2024年中に8つの鉱山が閉鎖され、ケメロヴォ州知事Ilya Seredyuk氏は、約500人の労働者が数カ月にわたり給与未払いのままであると明らかにしている。Inskaya鉱山では約250人の従業員が解雇されるなど、人員整理も各地で進んでいる。

世界市場の変化や国内需要の減少、主要輸出先である中国やインドの需要縮小といった外的要因に加え、財務体質の脆弱な企業が多いことも、ロシア石炭産業の不安定さを深刻化させている。政府は一部企業への税や社会保険料の支払い猶予措置などを通じた国家支援を検討しているが、抜本的な産業再編が求められる状況となっている。

(石炭開発部 佐藤 譲)

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