インドネシア:中国とインドによるインドネシア産石炭の輸入減少と高品位への需要シフトがインドネシア石炭産業に大きな影響を与えている
掲載日:2025年7月4日
2025年6月26日付地元報道によると、中国とインドによるインドネシア産石炭の輸入減少と高品位への需要シフトがインドネシア石炭産業に大きな影響を与えている。現在、同国の産業は価格競争の変化、他国の石炭との競合、国内政策への対応という課題に直面している。
インドネシアは世界最大の一般炭の輸出国として、中国とインドを最大の輸出先としてきた。しかし2025年に入り、両国の輸入動向に大きな変化が現れている。経済的合理性や環境政策を背景に、両国は高品位への切り替えを進めており、中・低品位を主力とするインドネシア炭の競争力は低下している。高品位は高価格ではあるが、エネルギー効率(米ドル/MWh)の面で優れており、インドネシア炭よりも経済的に優位な選択肢となっている。一般に、高品位100万トンはインドネシア炭120万~150万トンに相当するとされており、運搬、保管、燃料効率の面でも優位性がある。
また、他国の石炭との競合も顕著となっており、特に中国向けにはモンゴル炭、インド向けには南アフリカ炭が市場シェアを拡大。2025年1~5月期のインドネシア炭輸出量は、中国向けが前年同期比12.3%減、インド向けが同14.3%減だったのに対し、モンゴルの対中輸出は44.8%増、豪州も3.4%増となっている。これにより、インドネシア炭の数量・品質両面での相対的劣位が顕在化している。
このような状況を受け、インドネシアの石炭企業は販売先の国内市場への転換を進めている。特に、ニッケル製錬業界からの旺盛な需要に支えられ、2025年1~5月期における国内販売比率は過去最大の48.6%に達した。政府が火力発電所向け石炭価格に上限を設けている一方で、製錬業界向けの販売は収益性が高く、同業界は石炭産業にとって救世主となっている。
一方で、中国・インドの需要減退を受け、ASEAN諸国(ベトナム、フィリピン、マレーシア)や南アジア諸国(バングラデシュ、パキスタン)への輸出拡大を目指しているが、これらの国々の市場規模は限定的であり、代替先としては不十分である。また、ロシア、コロンビア、モザンビークなど他国との価格競争も激化している。
国際市況の変化と政府の石炭政策の狭間で、インドネシア石炭産業は大きな転換期を迎えている。中・低品位を中心とした従来のビジネスモデルは、脱炭素化の世界的潮流と高品位炭への需要シフトの中で、持続可能性を失いつつある。
インドネシアは世界最大の一般炭の輸出国として、中国とインドを最大の輸出先としてきた。しかし2025年に入り、両国の輸入動向に大きな変化が現れている。経済的合理性や環境政策を背景に、両国は高品位への切り替えを進めており、中・低品位を主力とするインドネシア炭の競争力は低下している。高品位は高価格ではあるが、エネルギー効率(米ドル/MWh)の面で優れており、インドネシア炭よりも経済的に優位な選択肢となっている。一般に、高品位100万トンはインドネシア炭120万~150万トンに相当するとされており、運搬、保管、燃料効率の面でも優位性がある。
また、他国の石炭との競合も顕著となっており、特に中国向けにはモンゴル炭、インド向けには南アフリカ炭が市場シェアを拡大。2025年1~5月期のインドネシア炭輸出量は、中国向けが前年同期比12.3%減、インド向けが同14.3%減だったのに対し、モンゴルの対中輸出は44.8%増、豪州も3.4%増となっている。これにより、インドネシア炭の数量・品質両面での相対的劣位が顕在化している。
このような状況を受け、インドネシアの石炭企業は販売先の国内市場への転換を進めている。特に、ニッケル製錬業界からの旺盛な需要に支えられ、2025年1~5月期における国内販売比率は過去最大の48.6%に達した。政府が火力発電所向け石炭価格に上限を設けている一方で、製錬業界向けの販売は収益性が高く、同業界は石炭産業にとって救世主となっている。
一方で、中国・インドの需要減退を受け、ASEAN諸国(ベトナム、フィリピン、マレーシア)や南アジア諸国(バングラデシュ、パキスタン)への輸出拡大を目指しているが、これらの国々の市場規模は限定的であり、代替先としては不十分である。また、ロシア、コロンビア、モザンビークなど他国との価格競争も激化している。
国際市況の変化と政府の石炭政策の狭間で、インドネシア石炭産業は大きな転換期を迎えている。中・低品位を中心とした従来のビジネスモデルは、脱炭素化の世界的潮流と高品位炭への需要シフトの中で、持続可能性を失いつつある。
(ジャカルタ事務所)
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