ロシア:政府令「石炭産業企業に対する支援策について」の草案に関し、石炭産業に真に必要なのは一時的な休息ではなく構造改革であるとの見方

掲載日:2025年7月25日

7月22日付けの地元メディアによると、財務省が政府に提出した政府令「石炭産業企業に対する支援策について」の草案に関し、専門家の間では、石炭企業が困難な時期を生き延びる一助となることに異論はないものの、石炭産業に真に必要なのは一時的な休息ではなく構造改革であるとの見方で一致している。

調査会社Neft Research(NR)のコンサルティング部門パートナーであるコトフ氏は、今回の支援策により、業界は数か月持ちこたえ、一部企業の倒産は先送りされるだろうとしたうえで、「国際市場における石炭価格の上昇など根本的な変化がなければ、ロシアの石炭企業の根本的な問題は解消されない。今回の施策は、症状に対する対症療法にすぎず、病気の治療にはなっていない」と指摘している。

同社のエネルギー専門家であるロジオノフ氏も同様の見解を示し、「これらの措置は一時的な休息を与えるに過ぎない。今年11月30日に向けて石炭価格が上がるどころか、記録的な安値に近づいており、主要輸入国の需要も停滞または減少傾向にある」と述べた。

また、金融グループFinamのカラチェフ氏は、ロシア石炭企業の問題は輸出と深く関係しているとし、「対露制裁による欧州市場の喪失、他市場での価格競争の激化、国際価格の低迷、ルーブル高の進行により、輸出の採算が取れなくなっている」と分析。さらに、「主要金利の高騰により運転資金調達が困難となっており、これも深刻な問題である」と付け加えた。

ロジオノフ氏は、石炭輸出の長期的な採算性低下の要因として、(1)世界的な一般炭需要の鈍化、(2)原料炭供給者間での競争激化、(3)中国における生産増加、(4)南アジアおよび東アジアでの再生可能エネルギーの台頭を挙げている。

コトフ氏は、より持続的な支援策として、長期的に業界を支援できる対策として、北西部および南部の港からの輸送に対する12.8%の割引維持を提案。また、税金や社会保険料の支払い猶予についても「1年以上の期間が必要」と強調した。さらに、遠隔地の深部炭層や高コストな坑内採掘への新規ライセンス発行を制限し、輸出向けの高品位原料炭および一般炭の生産開発に注力すべきとの考えを示した。

ロジオノフ氏も同様に、現在ロシアの石炭生産の4分の1を占める坑内掘りについて「危険性が高く採算性が低いため、廃止すべき」と指摘。黒字を維持できるのは、「極東の港湾に近接し、原料炭輸出を主収益源とする企業に限られる」との見方を示した。

(モスクワ事務所 屋敷 真理子)

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