インドネシア:国営電力会社(PLN)、同社保有の石炭火力発電所の運転を2056年までに全て終了する方針

掲載日:2025年10月17日

2025年10月8日付の地元報道によると、国営電力会社PT Perusahaan Listrik Negara(PLN)は、同社保有の石炭火力発電所(PLTU)の運転を2056年までに全て終了する方針を明らかにした。これは、政府が掲げる2060年までのネットゼロ排出(NZE)目標に沿った取り組みである。PLNのプロジェクト管理・新再生可能エネルギー担当者によれば、現在稼働中の石炭火力発電所はすべて既存の電力購入契約(PPA)に基づいて運営されており、新たな石炭火力発電所の建設は行わない方針である。既存契約の期限を迎える2056年までに全てのPLTUが運転を停止することで、2060年までに排出量ゼロの達成が可能になるとしている。

電力部門はインドネシアの炭素排出量の最大45%を占める最大の排出源であり、PLNは石炭火力の廃止を脱炭素化に向けた企業としての責任ある取り組みと位置付けている。現状のまま推移すれば、2060年にはCO2排出量が年間10億トンを超えるとの警鐘も鳴らされている。

石炭火力に代わる電源として、PLNは新エネルギー・再生可能エネルギーの導入を積極的に進めている。これは、2025~2034年電力供給事業計画(RUPTL)に基づくもので、同計画では2034年までに69.5GWの新規発電容量を追加する計画である。

このうち、再生可能エネルギーが42.6GW(61%)、蓄電関連が10.3GW(15%)、化石燃料発電が16.6GW(24%:ガス10.3GW、石炭6.3GW )を占める。

再エネの内訳は、太陽光発電が17.1GW、水力11.7GW、風力発電7.2GW、地熱5.2GW、バイオエネルギー0.9GW、原子力発電0.5GWとなっている。蓄電関連では、揚水式水力発電4.3GWおよび蓄電池6.0GWの導入が予定されている。インドネシア政府は、化石燃料依存型の電源構成から再生可能エネルギー中心の構造へと大きく転換する方針を揚げている。

しかしながら、2025年時点で見られる外資系ガソリンスタンドへの不合理な規制などを考慮すると、既得権益を享受している政府および議会関係者が、主要な資金源(賄賂)である石油・ガス権益を握るPertaminaや鉱物・石炭関連企業を真に統制することは極めて困難であると考えられる。2060年という35年の目標に対し、現役の政策決定者達が真摯に対応することも、国民性から見ても期待しにくい。

さらに、地球温暖化に対する科学的根拠への懐疑的な見方がトランプ米大統領をはじめとする世界的潮流として再び広がる中、インドネシア政府の現在政策が形骸化する可能性も否定できない。

(ジャカルタ事務所)

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