米国:米国、ワイオミング州の炭鉱区売却を延期

掲載日:2025年10月17日

10月9日の現地メディアによると、米国内務省(US Department of the Interior: DOI)は10月8日、ワイオミング州の連邦所有地における石炭採掘権の売却を延期したと発表した。ワイオミング州キャンベル郡およびコンバース郡にある 3,508 エーカー(約14.2㎢)の連邦所有の炭鉱区の売却が8日に予定されていた。この鉱区には、3億6,500万トンの石炭が採掘可能とされているというが、内務省は売却日程を改めて公表すると述べ、延期理由については明らかにしなかったと報道されている。

メディアではこの延期の背景として、10月6日にモンタナ州で行われた連邦政府の炭鉱区に対する入札が低額であったことにDOIが対応したものと考えている。米国土地管理局(Bureau of Land Management:BLM)は6日、モンタナ州ビッグホーン郡の1,262エーカー(約2.07㎢)を対象とした炭鉱採掘権入札を実施した。ナバホ・トランジショナル・エナジー社が唯一の入札者となり、同社は18万6,000ドルを提示し、さらに同社は提出書類の中で、一般炭需要の減少を理由に公正市場価格の引き下げを主張していた。しかし内務省は同社の入札に対して鉱物リース法の要件を満たしていないと判断して却下している。

モンタナ州の入札鉱区の石炭推定埋蔵量は約1億6,700万トンとなるため、1トンあたりわずか1セントにも満たない金額であり、石炭市場関係者を驚かせたという。これはこの地域における過去の連邦政府所有の石炭リース売却価格と比較すると、嘆かわしいほど低いという。鉱物リース法は入札額が市場価格と同額かそれを上回ることを義務付けているが、却下された入札を過去の取引と比較すると、大きな乖離が見られる。米国連邦政府のデータによると、この地域で最後に行われた大規模な売却は2012年で、ピーボディ・エナジーの子会社がワイオミング州で7億2,100万トンを7億9,300万ドルで売却しており、これは1トンあたり約1.10ドルに相当するという。

この1セントにも満たない入札額が示すものとして、あるエネルギーデータアナリストの見解では石炭市場の競争力の鈍化であるとしている。他方、マーク・ゴードンワイオミング知事はトランプ大統領の石炭産業復興への取り組みが実を結ぶまでには時間がかかる一方で、AI等の電力需要に対応するためには石炭産業の拡大が不可欠であるとの政権の考えを強調している。あるメディアの問合せに対しDOIは、オバマ元大統領およびバイデン元大統領が数十年にわたる気候や汚染への影響を軽減し、再生可能エネルギー源への移行を促進するため、石炭に関する環境規制を強化したしたことが、米国内石炭生産を全面的に停止させ、米国石炭産業への信頼を失わせることになったと回答している。

(石炭開発部 福水 理佳)

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