欧州:EU、石炭火力発電所を2028年まで稼働させるためポーランドの特例を認める

掲載日:2025年10月24日

10月9日の海外メディアによると、欧州委員会(European Committee: EC)はポーランドに対して、2028年末までEUの電力容量市場において石炭火力発電所を稼働させ続けることを許可する特例を承認したと発表した。この承認は2025年8月11日に施行され、適用期限は2025年7月1日から2028年12月31日までとなる。これによりポーランド政府は、電力容量市場において定められた、CO²排出量基準を超えてしまっているポーランドのハードコールおよび褐炭による石炭火力発電所に対して財政支援可能となる。ポーランドは石炭を生産する最後のEU加盟国であり、依然発電量の多くを石炭へ依存している。ECは、この特例措置はEUの長期的な脱炭素化目標を損なうものではなく、ポーランドのエネルギー移行期間中の送電網維持のための移行措置として意図されていると強調している。

EUの電力市場に係る規則であるEU規則2019/943では、キロワット時(kWh)あたりCO²排出量550グラムを上限とし制限しているが、2025年6月30日までは、この規定量550グラムを超えても電力容量メカニズムへの参加が許可される規定となっていた。ポーランドは今回の期限延長の特例措置を取得したことにより、ポーランド政府が実施している追加オークション開催が可能となる。追加オークションは、電力システムにおける電力容量の不足防止および不足容量分確保のために行われるものである。現在2025年のオークションはすでに開催済みであるが、2026年、2027年、2028年の3回の年次オークション開催が可能となった。

一方、ECによる特例承認はポーランド政府に国家資源適正評価(National Resource Adequacy Assessment)計画の更新に関連する要件を課しており、ポーランドが経済的仮定に基づき将来の電力輸出と輸入を現実的に予測するための詳細なモデリングの実施、想定されるコストと収益を考慮したプラント閉鎖・一時閉鎖・新規建設の可能性を分析するための10年間の予測計画の実施、および、ポーランドの発電所の保守および改修スケジュールが実際の運用計画と国の状況を反映していることを証明するという、3つの要件を満たすことが条件となっている。

EUの電力容量市場について:
EUの電力容量市場は、決められた期間の中での電力容量を維持するために、発電所やその他の市場参加者に報酬を与えることにより、電力システムの安定性を支援するメカニズムとなる。実際に供給された電力に対して支払いが行われる従来のエネルギー市場とは異なり、電力容量市場には、需要の高い状況で容量を供給する準備ができている事業者に対しての追加報酬が含まれる。停電のリスクを最小限に抑えるための十分な予備電力を確保することが、電力容量市場の主な目的となっている。

電力容量市場は、発電所、蓄電または需要削減を目的とする施設がオークションの対象となり、対象期間内のオークションの落札者との契約となる。また、電力需要のピーク時など必要なときに指定された電力容量を提供しなければならない義務がある。ポーランドの電力容量市場は、脱炭素化とエネルギー需要の増加による課題に対処するために導入された。エネルギー安全保障を確保し、国のエネルギー転換を支援する上で重要な役割を果たしている。

(石炭開発部 福水 理佳)

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