ロシア:Mechel社の動向

掲載日:2013年12月26日

ロシア:Mechel社の動向 (PDF : 211KB)

現地報道をもとに、最近の Mechel 社の動向を取りまとめた。
- 総額約93億 USD(今年3月末時点)の債務を抱えて厳しい財務状況に苦しむ Mechelの株価が、11月13日急落した。モスクワ証券取引所での株取引で一時は50%近く下落し、終値は前日比41.4%安となった。債務返済協議が難航しているとの憶測が原因ではないかと報道された。
- その後11月末から12月初めにかけての報道によれば、同社は複数銀行(注)と、10億USDのシンジケートローンに関して2014年末までのローン契約条件(財務状況制限条項)の履行判定期間延長及び2016年までの返済猶予について合意した他、 VTB 銀行と18億USDのローンに関して2014年までの履行判定機関を2014年末まで延長することで合意できたとのこと。
(注)ING Bank N.V., Societe Generale, UniCredit, Commerzbank Aktiengesellschaft,Raiffeisen Bank International AG, VTB 銀行 , Caterpillar Financial Services Corporation, ICBC(London)plc.
- Mechel は9月に合意が発表されていたエリガ炭田開発向け融資総額25億USDのうち第1トランシェ1.5億USDを、予定通り VEB 銀行から受領した。
- 11月25日にはメドヴェージェフ首相が Rusal、Evraz、Mechel など金属・鉱山会社代表と面談し、世界市況及びロシア経済の現状を背景とした業界状況及び支援策について協議した。現地報道によれば、大規模な投資プロジェクト実現に関して積み上がった債務再編に対する国家保証メカニズム改善、不況下で採算がとれず休止となった企業設備に関して連邦及び地方予算からの補助金拠出、Gazprom、Rosneft、Transneft の金属会社に対する未払い金支払いの迅速化、労働省及び金属・鉱山会社に対して2014年のリストラ予想及び、解雇対象者への支援策提案提出を要請することなど、13の支援策について討議された模様。
- 11月27日、 Mechel モスクワ本社職員に対する給与遅配が報道された。11月15日及び25日の給与日に支払いが行われておらず、Mechel 側もその事実を認めたが、「技術的な理由であり、近日中に支払いを実施する予定」とした。今年第3四半期の同社会計報告書によれば、本社職員数は261名、今年1~9月までの給与総額は4億200万RUBとのことで、月平均の給与総額4,400万 RUB 、一人当たり16万8,000RUB の計算となる。
ロシア連邦雇用局には、職員からの告発は届いていないが、給与遅配に対しては利息が発生し、また企業首脳に対しては刑事告訴もありうるとのこと。翌28日には、遅配額全額が支払われたとの追加報道があった。
- 続いて12月12日には、サハ共和国労働監督局が Mechel 子会社の Yakutugol で給与支払いに関する監査を行い、 Mechel に対して職員3882名の10月分給与総額約1億1,180万RUBの未支払い事実を確認した、との報道があった。これに対して翌13日、 Mechel広報部副部長は、令状発行前に、遅配全額の支払いを行ったと発表した。
- 12月19日に行われたプレス・コンファレンスでプーチン大統領は、ワニノ商業港で所有者が Mechel に代わって、「数100人」がリストラに遭って困窮している問題を取り上げた記者に対して回答した。 Mechel について「悪くない会社」と呼び、同社がワニノ商業港に参入したことは善いことであるが、生産の近代化を進める一方で社会問題を解決する必要があるとして、リストラが予想されるのであればその対象者が今後どこで働き、収入を得て家族を養っていけるか、事前に行政とともに検討するべきである、と述べた。
これに対し同日、ワニノ商業港側は、所有者交代時点での労働者数は1,315名、うち74名は再教育により港内の別の職種に就いており、事実上解雇となったのは45名で、再教育を辞退した年金受給年齢に達した人がその多くを占めている、とのコメントを発表した。

(モスクワ 屋敷真理子)

おことわり:本レポートの内容は、必ずしも独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構としての見解を示すものではありません。正確な情報をお届けするよう最大限の努力を行ってはおりますが、本レポートの内容に誤りのある可能性もあります。本レポートに基づきとられた行動の帰結につき、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構及びレポート執筆者は何らの責めを負いかねます。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

レポート一覧

Adobe Reader

PDF形式のファイルをご覧いただくには、アドビシステムズ社から無償配布されているAdobe Readerプラグインが必要です。

ページの先頭へ