ロシア:石炭産業長期発展プログラム改訂

掲載日:2014年4月3日

ロシア:石炭産業長期発展プログラム改訂 (PDF : 189KB)

2012年1月に承認された「2030年までのロシア石炭産業長期発展プログラム」が改訂され、3月5日のロシア政府付属分析センターで行われた円卓会議で討議された。
現在、極東及びバイカル地域で生産プロジェクト及び港湾整備プロジェクトが活発に進められていることを受け、改訂版では、ロシアにおける石炭生産の中心地が、現在のクズバス地方からロシア東部に移行すること、また、輸出においても2030年に向けて8,000万tの処理能力を確保する見込みの極東の港をベースに、東向け輸出が大きく拡大することが予想されている。

石炭生産
改訂版では、主に極東及びバイカル地域における生産拡大により、2030年の生産量予測を最大5億tに上向き修正。
2013年 2015年 2020年 2030年
長期プログラム初期版 3.51億t 3.55億t 3.80億t 4.30億t
2014年改訂版 3.71億t 4.23億t 5億t

うち、極東バイカル地域での生産量の割合予測は下記の通り。
2013年 2015年 2020年 2030年
長期プログラム初期版 20% 21% 23% 26%
2014年改訂版 25% 32% 40%

石炭輸出
改訂版では、ロシア石炭輸出における西向け・東向けの割合が大きく変化することが予測されている。
2013年(見込み) 2030年予測
西向け 東向け 西向け 東向け
長期プログラム初期版 8,400万t(60%) 5,600万t(40%) 8,500万t(50%) 8,500万t(50%)
2014年改訂版 8,500万t(41%) 1.2億t(59%)

鉄道インフラ
東向け輸出拡大のネックとなる鉄道輸送強化のため、運輸省が策定した2018年までのシベリア鉄道及び BAM 鉄道の迅速な発展に向けた提案、総額5,621億 RUB を承認した。うち3,020億RUR はロシア鉄道が、2,601億RUB は国が支出する。
作業内容は下記の通り。
- カルィムスカヤ~ザバイカルスク区間、ビロビジャン~レニンスク区間、バラノフスキー ~ハサン区間、コムソモルスク・ナ・アムーレ ~ソヴェツカヤ・ガヴァニ区間(クズネツキー新トンネル建設含む)の改修及び拡張(564億RUB)
- 複線区間拡張、駅退避線の延伸、鉄道連結点及び国境・港付近駅の拡張(259億RUB)
- 操車場拡張、人口施設の建設及び改修(343億RUB)
- シベリア鉄道(5,858km)及び BAM 鉄道(2,388km)の軌道改修(1,979億RUB)
- シベリア鉄道及び BAM 鉄道の鉄道インフラの修理及び拡張(2,476億RUB)

港湾インフラ
港の石炭積み出し能力強化計画のほとんどは、極東であり、2030年に向けて、極東の港の積み出し能力は年間8,000万tを超える見込み。
現在極東で積極的に進められている港湾インフラ整備計画として、下記が挙げられている。
- ムチカ湾にて、複数の石炭ターミナル(SUEK-2,000万t、 Mechel-1,700万t、Kolmar-1,200万t、 TEPK-1,500万t)の建設が進められている。
- ナホトカ港アスタフィエヴォ岬では、600万tの積み出し能力を持つ新港建設。
- スホドル湾に2,000万tの積み出し能力を持つ、独立系石炭会社向け石炭積み出しコンプレクス建設が、 SDS により進められている。
- 計画中の港湾インフラでは、ロシアの東部地域(トゥヴァ共和国、ブリヤート共和国、ザバイカリエ地方、サハ共和国の新規炭田)からの石炭積み出しを想定している。
- 改訂版では、ロシアにおける港経由の石炭積み出し量予想が上向き修正された。

2013年 2015年 2020年 2030年
長期プログラム初期版 9,100万t 1.08億t 1.2億t 1.9億t
2014年改訂版 1.25億t 1.7億t 2.3億t

発電用石炭供給
ロシアの発電所における石炭需要は、褐炭(カザフ産含む)需要が増加傾向にあることが確認されている。各社計画及び地域発展プログラムを考慮した評価によれば、2030年、発電所に対して1.5億tのロシア産石炭が供給される見込み。これは改訂前の予測よりも3,000万t多い数字であり、この増加分はすべて極東及びバイカル地域の発展に伴う発電力増強によるもの。

改定版で示される発電所における石炭需要の最大予測は、下記の通り。
2013年 2015年 2020年 2025年 2030年
長期プログラム2014年改訂版 9,200万t 1億t 1.19億t 1.29億t 1.5億t

(モスクワ 屋敷真理子)

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