欧州:EU ETS対象排出量が過去6年間で最大の減少を記録

掲載日:2021年4月28日

4月23日の現地報道によると、2020年のEU排出量取引制度(EU ETS)の対象事業者による温室効果ガス(GHG)排出量は、2019年に対して13.3%減少した。2015年以来の急激な減少は、COVID-19のパンデミックによる航空業界への影響によるところが大きい。

航空業界からの排出量は2020年に64.1%減少し、2015年以来の減少となった。定置式設備(発電所及び製造設備)では減少傾向が続いているが、2020年には11.2%減少し、過去6年間で最大の減少となった。EU ETSは、EUのメンバー国28カ国とアイスランド、ノルウェー、リヒテンシュタインにある11,000カ所以上の発電所や製造施設に加え、欧州の空港間を飛行する約500の航空会社の排出量も対象としている。

・発電所からの排出量は14.9%減少
発電所や製造設備などの定置式設備からのGHGの検証排出量(verified emission)は、2020年にはCO2換算で133万1,000トンとなった。電力部門では、パンデミックによる電力消費量の減少に加え、以前から指摘されていた脱炭素化の傾向を反映し、14.9%の減少となった。これは、パンデミックによる電力消費量の減少と、石炭から天然ガスへの転換、化石燃料から再生可能エネルギーへの転換などの脱炭素化の流れを反映したものである。2020年の結果は、COVID-19が存在しなかった昨年の15%と同様だった。

・産業界からの排出量は平均7%減少
産業部門の排出量は平均で7%減少し、鉄鋼が11.7%減、セメントが5.1%減、化学が4%減、製油所が8.1%減など、ほとんどの部門で削減が見られた。しかしながら、現在のデータでは、これらの削減量のうち、排出効率の向上によるものがどの程度の割合なのかを判断することは、まだできないと、欧州委員会は述べている。

・COVID-19危機は航空会社の排出量を大きく減少させた
航空会社の2020年のCO2排出量は、2,450万トンだった。これは、2019年に記録した6,820万トンに比べて約64.1%の減少となったが、産業部門と同様に、この減少のうちどれだけが排出効率の向上によるものかを判断することはできない。

EU ETSでは、すべての事業者(定置式設備及び航空会社)が、2020年の検証排出量を2021年3月31日までに報告することが求められていた。まだ確定したわけではないが、ほとんどのセクターと国で報告率は95%以上となっている。

(石炭開発部 奥園 昭彦)

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