欧州:イタリア、本土最後の石炭火力発電所を待機させることを検討

掲載日:2025年5月9日

イタリアは、2029年1月までに石炭火力発電所を段階的に廃止する計画であるが、4月16日の現地メディアによると、2025年に稼働停止が予定されている、イタリア本土において最後の石炭火力発電所2基の稼働停止後は、施設を解体せずに待機状態に保つべきと、ジルベルト・ピチェット・フラティン・エネルギー大臣が述べたという。

現在、イタリア国内全体としての石炭火力発電所は合計4基存在する。上述したイタリア本土のイタリア電力会社エネル社のトッレバルダリーガ・ノルド発電所およびブリンディジ・スッド発電所の他に、サルディーニャ島にはエネル社のスルシス石炭火力発電所およびチェコの電力会社EPプロドゥツィオーネ社のフィウメ・サント発電所がある。このうちイタリア本土の石炭火力発電所2基は、費用対効果が低いためすでに休止している状況であり、2025年には閉鎖が予定されている。一方、サルディーニャ島にある2基は現在稼働しているが、2029年までに閉鎖が予定されている。

フラティン・エネルギー大臣は、イタリアは昨年末にロシアからの天然ガスの購入を停止し、米国からの液化天然ガス等の代替供給源に切り替えていると発言している。また、地政学的な状況は依然として厳しく、ガス価格の高騰や供給のためのパイプラインの不具合による電力供給へのリスクは依然としてあり、本土の火力発電所2基においては万が一に備えて残しておくべきとし、他方、経済的に不利となるため石炭生産は行わないと述べている。

メディアが公開している暫定的データでは、イタリアにおける2024年の発電量全体に占める石炭の割合は1.3%、同年電力消費に占める割合が1.1%と低いため、今回の同大臣の発言は、主要電力が不安定になった場合に、石炭火力発電が貴重な電力供給として位置づけられたものと思われる。

イタリア政府は2017年10月、国家エネルギー戦略の一環として2025年までに石炭を段階的に廃止すると発表した。その後2023年には、石炭火力発電からの脱却を2025年から2027年に延期し、さらに昨年7月、イタリア政府は欧州委員会に国家エネルギー・気候計画を提出し、その中で、送電接続の遅れや技術的課題により、サルディーニャ島のスルシス石炭火力発電所の閉鎖は2028年まで延期される可能性があり、イタリアの国営石炭火力発電における完全な段階的廃止を2028年として1年延期している。

(石炭開発部 福水 理佳)

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